カジモドはmonster…「化け物」でなく「怪物」と訳された理由

劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より“The Bells of Notre Dame(ノートルダムの鐘)”の英語歌詞を見てみると、“monster”という単語が出てきます。

カジモドのことを指すこの単語ですが、何故「化け物」ではなく「怪物」と訳されたのでしょうか?

【ミュージカル“The Hunchback of Notre Dame”/“The Bells of Notre Dame”/作詞:Stephen Schwartz * 劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』/「ノートルダムの鐘」/訳詞:高橋知伽江】

 

「化け物」?それとも「怪物」?

疑問を抱いたきっかけ

 

劇団四季の日本語訳が発表される前、つまり英語歌詞を聞きこんでいた時、私は“monster”は「化け物」と訳されるものだと信じていました。

何故なら「化け物」とは「見るからに恐ろしいもの、見るに堪えないもの」という印象があり、「醜い容姿」を指すと考えていたからです。

しかし、日本語では“monster”が「怪物」と訳されていたので、どうも納得がいきませんでした。

…というのも、「怪物」とは「力強い恐竜」のような生き物だと思っていたからです。

 

何故“monster”を「化け物」ではなく「怪物」と訳したのか。

今回はその理由について考えてみたいと思います。

 

“monster”の意味

 

“monster”の意味は、辞書でこのように説明されています。

 

monster… (想像上の)怪物化け物、怪奇な形のもの、奇形体、極悪非道な物、悪党

 

…うーむ。

“monster”の説明として、どちらも存在します。

どちらも「見た目が恐ろしいもの」とか「気持ちが悪いもの」を指すのですが、これでは比較にならないので、日本語における「化け物」と「怪物」の違いについて見ていきましょう。

 

「化け物」の意味

 

「見るからに恐ろしいもの、見るに堪えないもの」という印象があった「化け物」ですが、辞書ではどのような説明が成されているのでしょうか?

 

動植物や無生物が人の姿をとって現れるもの。キツネ・タヌキなどの化けたものや、柳の精・桜の精・雪女郎など。また、一つ目小僧・大入道・ろくろ首などあやしい姿をしたもの。お化け妖怪

化け物(コトバンク)

 

私が想像していた「見るからに恐ろしいもの、見るに堪えないもの」というイメージは、あながち間違いではなかったようですね。

注目すべき点は、元が人間ではないということ。人間ではないものが、人間の姿をした状態が「化け物」なんですね。

また、こんな風にも書かれていました。

 

① 異様な姿・形をして、化け現れたもの。妖怪変化。おばけ。 「 -が出た」
② 普通の人間とは思われない能力をもっている人

化け物(コトバンク)

 

①は先程と同じ内容なので、②に注目します。

普通の人間とは思われない能力を持っている人…つまり「突出した能力を持ち合わせた人」ということです。

「バレエ界に化け物現る!」というキャッチコピーが新聞の一面に出ようものなら、「バレエ界に凄いダンサーが現れたんだな!」と分かります。

そう考えたとき、カジモドはどうでしょう?

人間ですから①ではないですし、②でもないですよね。

 

「怪物」の意味

 

一方の「怪物」にはどのような意味があるのでしょうか?

 

① 正体のわからない、不気味な生き物
② 性質・行動・力量などが人並外れた人物

怪物(コトバンク)

 

「化け物」と微妙にニュアンスが異なっているのがお分かりになるでしょうか?

「怪物」とは「得体の知れない生き物だ」ということです。

 

また、このような説明もありました。

 

正体不明の生物や物体,とりわけ醜悪・不快・恐怖などの念を抱かせる存在の総称に用いられる語。また奇形の意味にも用いられる。奇形の誕生は古代にあって凶兆とされ,モンスターという英語もラテン語のmonstrum(兆候,警告の意)に由来する。一般に怪物と呼ばれるものは想像の産物が多く,いくばくかの事実や伝承を核に,人間の持つさまざまな不安や畏怖が投影されて成立した一種のシンボルともいえる。分類すれば,(1)ドラゴンやバジリスクなど,何種類かの生物の形態を混合したもの,(2)巨大ないし矮小なもの,(3)正常な同種と形態を異にするもの,に大別できる。

怪物(コトバンク)

 

要約すると「怪物」とはこういう存在です。

 

① 正体不明の生物(とりわけ醜悪・不快・恐怖などの念を抱かせる存在の総称)

② 奇形の意味

③ モンスターという英語もラテン語のmonstrum(兆候,警告の意)に由来

④ 一般に怪物と呼ばれるものは想像の産物が多い(何種類かの生物の形態を混合したもの)

 

こう見てみると、私が持っていた「怪物」に対するイメージは④のみだったんですね。

 

「化け物」でなく「怪物」と訳された理由

 

「化け物」と「怪物」の違いをそれぞれ見ていきましたが、決定的な違いはココです。

 

・化け物…人間でないものが人間の形となった(化けた)もの

・怪物…得体の知れないもの

 

カジモドは人間ですから「化け物」ではありません。

もちろん「化け物みたいだ」という意味で“monster”を「化け物」と訳しても良いでしょうが、やはりピッタリくるものは「怪物」でしょう。

加えて、ココも押さえておきたいですね。

 

・化け物…普通の人間とは思われない能力をもっている人

・怪物… 性質・行動・力量などが人並外れた人

 

カジモドは怪力の持ち主です。見た目をとっても、パワーをとっても「怪物」という訳がピッタリだと分かります。

 

いかがでしたか?

このように日本語の意味を1つずつ比較することで、深い発見があり勉強になりますね。

これは徹底的に調べ尽くされた上で「怪物」と訳されたのでしょう。

軽く「化け物では?」と考えていた私。劇団四季、恐れ入りました。

 

その他“The Bells of Notre Dame(ノートルダムの鐘)”の歌詞解説や、ミュージカル『ノートルダムの鐘』についてはこちらの記事をご覧ください。


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