ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より “Helpless” の英語歌詞を見てみると、エリザベスがハミルトンに出会ってから恋に落ちるまでの様子が非常に丁寧に、かつ美しく表現されています。
今回は、冬の舞踏会( “A Winter’s Ball” )にてハミルトンを見つけるまでの様子について解説しますよ。
ちなみに、「冬の舞踏会」がどのようなものだったかはこちらの記事で説明しています。是非併せてご覧ください。
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歌詞のおさらい
今回注目する歌詞は次のパートです。韻を踏んでいるところは赤文字にしてありますよ!
ELIZA:
I have never been the type to try and grab the spotlight
We were at a revel with some rebels on a hot night
Laughin’ at my sister as she’s dazzling the room
Then you walked in and my heart went “Boom!”
Tryin’ to catch your eye from the side of the ballroom
Everybody’s dancin’ and the band’s top volumeELIZA AND WOMEN:
Grind to the rhythm as we wine and dineELIZA:
Grab my sister, and
Whisper, “Yo, this
One’s mine.”
ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Helpless” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
エリザベスの性格
エリザベスの性格は1行目の “I have never been the type to try and grab the spotlight” で触れられています。
まず “I have never been the type ~” から、「私は未だかつて~というタイプ(性格)ではなかった」と言っていることが分かります。どんな性格ではなかったのか…というと、 “to try and grab the spotlight” です。grabは「横取りする」という意味ですから、「(他人に当たる)スポットライトを横取りするような」です。
つまり、エリザベスは相手の注目を自分が横取りしたり、自発的に動くようなタイプではないということが読みとれます。
ハミルトンに一目惚れをした瞬間
さて、そんな内気なエリザベスは姉妹で冬の舞踏会( “A Winter’s Ball” )に赴きます。
“We were at a revel with some rebels on a hot night” の内のrevelとrebelsのは発音がとても似ていますが、一文の中で韻を踏んでいます。revelは「酒盛り、お祭り騒ぎ」、rebelsは「反抗者、反逆者」でここでは革命を声高に叫ぶハミルトンやバーのような男たちを指しているのだと言えます。
“Laughin’ at my sister as she’s dazzling the room” のdazzlingは「まぶしい、見事な、目のくらむような」という意味です。 “Laughin’ at my sister” でエリザベスが姉に対して笑っていることが分かりますが、その原因は “as she’s dazzling the room” です。これは舞踏会の部屋でアンジェリカが注目を集めていることを指しており、その様子が見事なものだったから、可笑しくなってエリザベスは笑ってしまったんですね。
“The Schuyler Sisters” でも分かる通り、アンジェリカは賢く堂々としておりエリザベスとは対照的な性格ですアンジェリカの性格は歌詞から読みとれるので、是非併せてご覧ください。
そんな微笑ましい雰囲気の中、ハミルトンが部屋に入ってきます。 “Then you walked in” のyouがハミルトンのことです。そして、エリザベスがどうなったか… “and my heart went “Boom!” ” 、つまり心臓が「ボンッ」ってなった…一瞬にして射抜かれた…ということです!
恋ですね…
内気なエリザベスがこの後どうしたか…それが “Tryin’ to catch your eye from the side of the ballroom” の部分で歌われています。tryin’ to(trying toのカジュアルな言い方)は「~しようとする」という意味ですから、ここは「ダンスホールの隅からあなたと視線を合わせようとした」んです。エリザベスの内気さが手に取るように分かりますね!
エリザベスの大きな一歩
ダンスホールの人たちは踊り、演奏は最高潮で、エリザベスとアンジェリカはそのリズムに体を揺らしながらワインを飲んだり食事を食べたりしていた…ということが “Everybody’s dancin’ and the band’s top volume/Grind to the rhythm as we wine and dine” の部分で歌われています。
そして、エリザベスはどういう行動に出たか…まず “Grab my sister, (私の姉を掴んで)” 、 “and whisper, (そして囁いた)” したんです。何と囁いたかというと…
“Yo, this one’s mine.”
です。Yoというのはyouのカジュアルな言い方、this oneは「これ」ですがこの場合「この人」の意味でハミルトンを指します。mineが「私の」ですから、エリザベスはアンジェリカに対して…
「ねぇ、彼、私のだから」
と言っているんです!内気なエリザベスがハミルトンに一目惚れをしたものの、自分からは話しに行けない。でも姉はこのダンスホールの注目の的!そんな姉にハミルトンを取られないように、先手を打ったということですね。
さて、この時のアンジェリカの様子というのは “Helpless” では分かりませんが、 “Satisfied” では痛いほど分かります。アンジェリカとエリザベスの気持ちの比較をしてみて下さいね。
“Helpless” の、他の記事はこちらから。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。