ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より “I Know Him” の英語歌詞では、植民地アメリカの人々に対するイギリス国王・ジョージ3世の気持ちが歌われています。
二重人格のように甘ったるい口調と激昂する口調が時に入れ替わるこの曲の面白さを押さえましょう。
ジョージ3世が歌う曲は全て皮肉交じりです。ゆえに、かなりの笑いどころになります。
大いに笑うためにも、最低限の歴史は押さえておきたいところです。
“I Know Him” はジョージ・ワシントンが退任し、ジョン・アダムスが二代目の大統領になると知った時の反応を歌っていますよ。
※ 歴史的背景は、西川秀和先生(@Poeta_Laureatus)の記事を参考にさせて頂きました。詳しくは、こちらをご覧ください:西川秀和 note
『スリル・ミー』の解説・考察本を執筆しました!
「レオポルドとローブ事件」はどのような事件だったのか?何故「終身刑+99年」という判決だったのか?そんな疑問を解消しながら、ミュージカル『スリル・ミー』の刺激に迫る解説・考察本。
実際の事件ととミュージカルを比較しながら「実話」、「ニーチェの哲学」、「裁判」の3つの視点から作品に切り込んだ1冊。
Kindle(電子書籍)、ペーパーバック(紙書籍)、いずれも Amazon で販売中。
Kindle Unlimitedを初めてご利用の方は、体験期間中に0円で読書可能!
ジョージ3世が歌う3曲はセットで理解する
イギリス国王・ジョージ3世は『ハミルトン(Hamilton)』を通して次の3曲を歌います。
これらは全て同じ曲調ですが、ジョージ3世の歌う内容はアメリカとの距離感によって徐々に変わっていきます。
・ You’ll Be Back … アメリカがイギリスの植民地下にあったため、自分の権威を誇示している
・ What Comes Next? … 独立戦争でアメリカが勝利したため、自分の支配下ではなくなり、意固地になっている
・ I Know Him … ジョージ・ワシントンが大統領から退くことを知り、アメリカの行く末を野次馬根性で見届けている
どんどんアメリカとの距離が遠くなっていくので、後半になるにつれて、お得意の “Da da da da da da da da da daye da(ルンルンルン♪)” も少なくなっていきますよ(笑)。
全体を把握する上でも、まだお読みでない方は “You’ll Be Back” から見ていきましょう。
ジョージ3世が歌っていること
ワシントンが退任すると聞いてビックリ
They say,
George Washington’s yielding his power and stepping away
Is that true?
I wasn’t aware that was something a person could do
I’m perplexed.
Are they going to keep on replacing whoever’s in charge?
If so who’s next?
There’s nobody else in their country who looms quite as large―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “I Know Him” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
アメリカ独立戦争では民を導き、独立したアメリカの初代大統領となったジョージ・ワシントン。
そんな彼が、二代目の大統領になることを辞退します。
それを知って、ワシントンと対峙してきたジョージ・ワシントンはこんな風に驚くんですね。
“You’ll Be Back” ではイギリスがアメリカを支配下に置いていたため “you” と言っていますが、 “What Comes Next?” と “I Know Him” では、アメリカとの距離が遠くなったため “they” と歌っていることにも注目しましょう。
・ 彼らは言ってる
・ ジョージワシントンが権力を手放して、退任するって
・ それって本当なの?
・ そんなことできる人がいるだなんて信じられない
・ 僕は困惑している
・ これから誰か別の人をあてがうってことだよね?
・ もしそうなら、誰が次に?
・ 彼らの国にそんなことできる人他にいるかな?
そうすると側近が耳に耳打ちをして、ジョージ3世は驚きます。
“John Adams?(ジョンア・ダムス?)”
少年だったジョン・アダムスが大統領に
ここがサビの部分です。
I know him
That can’t be
That’s that little guy who spoke to me all those years ago
What was it ’85?
That poor man they’re going to eat him alive―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “I Know Him” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
ジョージ3世は、以前ジョン・アダムス会ったとがあることを持ち出しながら「あんな若造が信じられない」といった口調でこう歌います。
・ 僕、彼のこと知ってるよ
・ そんなバカは
・ ずっと昔に僕に話しかけてきたあの若者
・ あれは確か1785年だったかな?
・ 可哀想に、きっと餌食にされてしまうだろうね
そして、もはや自分の手の届かない場所にあるアメリカという国の行く末を、野次馬根性で見届けてやろうといった感じで、こう歌います。
Ocean’s rise, empires fall
Next to Washington they all look small
All alone watch them run
They will tear each other in to pieces Jesus Christ this will be funPresident John Adams,
Good luck!―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “I Know Him” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
大まかにはこんな感じです。
・ ワシントンに並べば全て小さく見えてしまうよね
・ 彼らが突っ走るのを、僕ひとりで見届けてやろう
・ きっと国(アメリカ)はバラバラになって、イエス・キリストもさぞかしお楽しみになるだろうね
・ ジョン・アダムス大統領、頑張ってね
最後のフレーズは、ジョン・アダムスを小馬鹿にしていることが分かりますね。
これにてジョージ3世はの3曲が終了です!
アメリカの歴史を知る上で、ジョージ3世ははとても重要です。是非押さえておきましょう!
“I Know Him” の、他の記事はこちらから。
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。