美しい流れで展開する「石になろう」の英語歌詞とその意味

劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より「石になろう(Made of Stone)」の英語歌詞を見てみると曲の題名と同じ “made of stone” というフレーズがところどころで出てきます。

劇団四季版では「石になろう」と訳されているフレーズですが、英語版では使われ方がそのフレーズ毎に異なり、歌詞に深みを持たせながら我々を歌の最後へと導いていきます。

“made of stone” というフレーズは一体どのように使われ、どんな風に歌を展開しているのでしょうか?

Music from the Musical

・作品名:ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)

・曲名:石になろうMade of Stone

・楽譜:Made of Stone

・訳詞:高橋知伽江(作詞:Stephen Schwartz)

アルバムを視聴する/楽譜を見る ・アルバム(日本語):ノートルダムの鐘
・アルバム(英語):The Hunchback of Notre Dame
・楽譜:

 

キーワードは「石造り(made of stone)」

 

『ノートルダムの鐘』終盤、カジモドの想い悩んでいた気持ちがむき出しになるのが「石になろう(Made of Stone)」です。ずっと友達として親しんで来た石像達に、カジモドは辛く当ってしまいます。

この曲の題名、劇団四季版では「石になろう」と訳されていますが、英語版の題名を忠実に訳すならば「石造り(石で造られた)」になるでしょう。

この石造り…というのがこの歌詞ではとても重要で、キーワードになっています。

 

劇団四季版の展開

 

劇団四季版の「石になろう」という曲題は、自暴自棄になったカジモドが以下の過程を経て「だったら石になってしまいたい」という結論から生まれた日本語訳です。

 

  1. 僕の気持ちなんて石のお前たちに分かるはずがない
  2. 石のお前たちの言う夢のような話しを聞いていたら、こんな酷い目に遭ってしまった
  3. お前たち(石像/ガーゴイル)よりフロローの方がマシ、彼は現実を教えてくれた
  4. こんなことならだったら石になってしまいたい

 

英語版の展開

 

しかし、英語版では “Made of Stone(石造り)” ということを、具体的に次のことと照らし合わせながら歌い、1つの軸を持って歌われています。

 

  1. 石像達
  2. フロローの言葉
  3. カジモド自身

 

これらの事柄がどのように英語で表現され、展開していっているのかをこれから説明していきます。少し長い記事になりますが、理解することで劇団四季版以上にカジモドの気持ちを感じられるはずです。是非お付き合いください。

 

 

美しい流れで展開する “made of stone”

石像達のこと

 

見ての通り、石像/ガーゴイル達は石像です。

カジモドだけが彼らと会話が出来、気持ちの共有をすることが出来ました。そんな彼らに感情をむき出しにして歌っているのが次の冒頭のパートです。

 

What do you know of me?
What do you know of all the things I feel?
You’re only made of stone!
―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Made of Stone” (作詞:Stephen Schwartz)

 

2行続けて出てくる “What do you know of~” というのは「~の何を知っているのさ」という意味です。1行目は “me(僕)” について、2行目は “all the things I feel(僕の感じる全ての事)” ですから、それぞれこうなります。

 

  • What do you know of me?…僕の何を知っている(分かっている)のさ?
  • What do you know of all the things I feel?…僕が全てのことに対してどう感じるなんて、どうやって分かるのさ?

 

このことに対して、3行目にカジモドは歌います。

 

  • You’re only made of stone!

 

一度onlyを抜いて “You’re made of stone!” とすると「君は石造りだ」となりますが、ここに強調のonlyが入ることで「君はただの石造りじゃないか!」と語気が強まります。このたった3行だけでも、カジモドが耐えてきた気持ちがどれだけ爆発してしまったかが分かりますね。

そしてこのブロックの最後でカジモドはこう吐き捨てます。

 

Would that I were
Made of stone like you
―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Made of Stone” (作詞:Stephen Schwartz)

 

ここは文章の構成が少し難しいですが、 “like you” は「~みたいに」という意味ですから、内容としては「自分もそうなるんだろうか、お前たちみたいに石造りだったら」となります。ここで歌われている「自分もそうなるんだろうか」というのは、カジモドに夢と希望を持たせるようなことを言う石像達のことを指しています。

今までカジモドを勇気づけてきた石像達に対して、自暴自棄になったあまり「今までしてきたことは全部お節介だ。僕も石造りだったらお前たちみたいに(お節介に)なるんだろうか」ということが歌われているんですね。こんな風に言われて、石像達はさぞかし辛かったでしょう…。

 

フロローのこと

 

“made of stone” の対象が石像達からフロローに変化するのが中盤辺りの歌詞です。ここでは “made of stone” というフレーズこそ使われていませんが、非常に近しいことが別の単語で歌われているので紹介します。

石像達は夢を見せるばかりだったが、フロローは違った…とカジモドが歌うパートです。

劇団四季版では「ご主人様の方がマシさ」と歌っていますが、英語版では「マシ」というスタンスでは歌っていません。

辛く悲しいけれども、現実・事実を見せてくれたのはご主人様であるフロローだったことを静かに認めるように歌います。この歌い方がなんとも切ないんです。この歌詞を聞いた時に完全にカジモドが外の世界との関係を持つことを諦めたように聞こえ、聴いている者としてはなおさら胸が締め付けられます。

これらのことが歌詞ではこう表現されています。

 

His words were cold as stone
But they were true
Not like you
―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Made of Stone” (作詞:Stephen Schwartz)

 

キーワードである “stone” という言葉を使い、フロローの今までの発言を “His words were cold as stone(彼の言葉は石のように冷たかった)” と歌っています。そしてその直後にくる、端的な言葉 “But they were true” で、「でもそれは事実だった」とぼそっと歌い、 “Not like you(君たちとは違う)” で語気を荒げます。しかもtrueとyouが韻を踏んでいるところが歌詞としても美しいですね。

たったこの3行で、カジモドの気持ちが手に取るように分かりますね。

私はこのパートを迎えるたびに、涙を流してしまいます。どんなに冷たい言葉であったとしても、それが事実だと外の世界を通じて知ってしまったからこそ、夢を見せた石像達とフロローを対極に置いて歌っているのです。

そして最終的にカジモド自身へと対象が変わっていきます。

 

 

カジモド自身のこと

 

これはこの曲の一番最後のフレーズです。

 

And my one human eye
Will evermore be dry
Until the day I die
As if I…
Were made of…
Stone!
―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Made of Stone” (作詞:Stephen Schwartz)

 

劇団四季版では「心閉ざし」と訳されている部分ですが、英語版では具体的に心を閉ざす様子が描かれています。

まず、 “my one human eye” は「僕の人間としての1つの目」です。カジモドは片目しか見えないので、たった1つの目というニュアンスであえて強調しているのだと思います。彼の目がその後どうなるかというと、 “Will evermore be dry(永久に乾いたままだろう)” だと歌っています。

しかもそれは、 “Until the day I die(自分が死ぬその日まで)” 乾いているということなのです。これらがどんなことかというと、 “As if I were made of stone!(まるで、僕が石造りみたいに)” だと締めくくられているんですね。

このように、 “made of stone” という言葉を曲を通して使い、最後に落とし込むことで歌詞としての厚みが出てきます。このパートでは現実を知って夢も見ず、希望も持たず、ただ現実を受け入れ、心も体も石になっていくような雰囲気を、ありありと感じることが出来ますよね。

こういったことを含めて考えると、題名に応じた歌詞として「石になろう(Made of Stone)」は『ノートルダムの鐘』の中でも特に素晴らしい歌詞の1つだと言えるでしょう。

 

 

ガーゴイルの重くて深い一言

自身は石造りだと認める

 

さて、ここまでで “made of stone” の展開は一通りご理解頂けたかと思いますが、「カジモド自身のこと」に至る前に、同じく “made of stone” を使い、カジモドの歌の流れをいったん止める本当に素晴らしい1フレーズがあるのでここで紹介します。

それは、日本語では「どうせ私たち石だものね/信じたのに君は強いと」と訳されている部分ですが、英語版で歌詞を読むとものすごく深いメッセージを感じ取ることができます。

 

You’re right, Quasimodo
We’re only made of stone

But we just thought
You were made of something
Stronger
―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Made of Stone” (作詞:Stephen Schwartz)

 

まず前半部分ですが、劇団四季版の「どうせ」という自暴自棄のような言い方ではなく “You’re right, Quasimodo(カジモド、君は正しいよ)” と石像達が石造りであることを認めているのが、より辛さを極めています。

しかも “We’re only made of stone” ですから、カジモドの言った通り「自分達はただの石造りだ」と言っているから尚更です。英語版では「ほっといてくれ」というカジモドを一度も見放したりはしないので、その心の広さに胸を打たれてしまいます。悲しそうに歌うところがまた儚いですよね…。

 

カジモドは石造りなのか…という問いかけ

 

そして後半です。 “we just thought” は “we thought(我々は思ったんだ)” に “just” という強調が入ったものなので、「でも、我々はただ思ったんだ」となります。

それに続くフレーズが “You were made of something stronger” なのですが、よく見てみるとここだけ “made of stone” ではなく “made of something stronger(何かより強いもので出来ている)” と歌われています。

つまり、カジモドは石像達のことを “made of stone(石造りだ)” と言ったり、自分がまるで “made of stone(石造りになってしまったように)” と歌ったりしていますが、同じような文体を使い、石像達はカジモドに投げかけるのです。

劇団四季版のように「強いと信じていた」と言われるよりも、英語版のように “we just thought
You were made of something stronger(ただ思っただけだよ、君が何かもっと強いものでできているんじゃないかって)” 」と言われた方がより胸に刺さりませんか?この1フレーズだけでも十分に涙腺が崩壊です。石像達の深い愛が感じられるパートになっています。

stronger(もっと強いもの)が何と比較してそう言われているのかというと、この曲のキーワードであるstone(石)でしょう。そして石像達の言う石より強いものとは何なのか…皆さんはどう考えますか?

是非そんなことを考えながら、繰り返しこの曲を聴いてみて下さいね。

 

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『ノートルダムの鐘』のオリジナルキャストはこちらをご覧ください。

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