幼いチャーリーが父親に教えられた「靴」とはどういうものなのか

ミュージカル『キンキーブーツ(Kinky Boots)』より “The Most Beautiful Thing in the World” の英語歌詞を見てみると、各登場人物にとって「靴」がどんな存在なのかが分かります。

 

 “The Most Beautiful Thing in the World” は「この世で最も美しいもの」という意味。

 

この曲の面白いところは「この世で最も美しいもの」が、どの登場人物にとっても「靴」であるということ。

 

しかしその理由が、それぞれ異なるところがポイントです。

 

ここでは、幼いチャーリーが父親に教えられた靴の存在を解説します。

Music from the Musical

・作品名:キンキーブーツ(Kinky Boots)

・曲名:The Most Beautiful Thing in the World

・作詞:Cyndi Lauper

アルバムを視聴/楽譜 ・アルバム(英語):Kinky Boots
・楽譜:

 

父親がチャーリーに託す「靴」とは

チャーリーが「歩むべき道」

 

The Most Beautiful Thing in the World” で歌われているのは、幼いチャーリーが「靴」に対して持っていた印象というよりは、チャーリーが父親に教えられた「靴とは何か」です。

靴工場の息子として生まれたチャーリーは、父親にこう教えられます。

 

MR. PRICE:
You might think beauty comes in spring and sparrow
Or when the sunrise hits the morning dew
But if you walk the straight and narrow
You’ll find the elegance and comfort is a—
Do you know what the most beautiful thing in the world is, Charlie?

YOUNG CHARLIE:
A shoe!

―ブロードウェイミュージカル“Kinky Boots”より “The Most Beautiful Thing in the World”(作詞:Cyndi Lauper)

 

チャーリーの父親が歌っているパートを見てみましょう。

 

・ 美しさとは春のすずめと共に訪れると思っているかもしれない

 

・ もしくは朝露に朝日が照り返すことだと思っているかもしれない

 

・ しかしもし道を歩けば

 

・ 優雅さと快適さとは…

 

・ 何がこの世で一番美しいものか分かるかな、チャーリー

 

この後、チャーリーがさも当然のように “A shoe!(靴だよ!)” と答えるのが、ほほえましいですね。

きっと、幾度となくこのやりとりをしてきたのだろうな…ということが容易に想像できます。

しかし、実はチャーリーの父親、サラッと厳しいことを言っているんですよね。

着目すべきが “straight and narrow” 。直訳すると「まっすぐで細い」という意味で、転じて「」を指します。

しかしその「道」とは、暗にこのような意味を指しています。

 

・ straight and narrow … ふむべき道、道、 適切で正直な態度をとる生き方

 

つまり、ここは、次のような二重の意味になっていることを押さえる必要があります。

 

・ 表の意味:優雅さと快適さは、道の上にある。つまり靴こそこの世で一番美しいものなのだ。

 

・ 裏の意味:優雅さと快適さは、おまえが歩むべき道の上にある。つまり靴こそこの世で一番美しいものなのだ。

 

ですから、曲の冒頭から「チャーリー、お前はこの靴工場を背負うんだぞ」と言われていると分かる訳です。

 

チャーリーが「守るべき歴史」

 

加えて、次のブロックでは、さらに踏み込んだ内容になっていることが分かります。

 

MR. PRICE:
For generations have paved the way before you
You’ll be next in line when my time is through
And there’s a saying handed down I’ve found of value
That you can tell about the fella from his

YOUNG CHARLIE:
Shoe!

―ブロードウェイミュージカル“Kinky Boots”より “The Most Beautiful Thing in the World”(作詞:Cyndi Lauper)

 

チャーリーの父親はこのように歌っています。

 

・ 今日に至るまで、道は代々敷かれてきた

 

・ 私の代が終わったら、次はお前の代だ

 

・ そしてここに、私が貴重だと思う受け継がれた言葉がある

 

・ 見極めることができる、男はその(靴で!)

 

日本でも人の身なりを感じ取る上で、足元を見ることは1つの判断材料だったりしますよね。

それと同じく、この靴工場 Price & Son で受け継がれた言葉は「靴でその人の人となりを知ることが出来る(That you can tell about the fella from his shoe)」と、父親は教えている訳です。

こうやって日々「靴の価値」「工場の価値」に関する刷り込みを行い、息子であるチャーリーが工場を継ぐよう教育していたのですね。

 

チャーリーが気付いてしまったこと

 

しかし、ある時チャーリーは気づいてしまいます。

 

YOUNG CHARLIE:
But, what if I don’t want to make shoes

MR. PRICE:
You’re a right funny kid, you are

―ブロードウェイミュージカル“Kinky Boots”より “The Most Beautiful Thing in the World”(作詞:Cyndi Lauper)

 

親子の会話はこうです。

 

・ でも、もし僕が靴を作りたくなくなったら?

 

・ なんてバカな息子なんだ、お前は

 

チャーリーにしてみれば、ごく自然な疑問ですよね。

しかし、父親は「そんなことはあり得ない」と言わんばかりに、聞く耳を持ちません。いえ、むしろ、そんなことは絶対に起こらないと思いこもうとしているのかもしれません。

『キンキーブーツ』における重要な要素の1つは、息子と対峙せず、自分の考え・価値観を押し付けようとする父親の存在です。後に登場するサイモン(ローラ)の父親もそうですね。

そういったことが、軽やかかつ厳格に歌われているのが “The Most Beautiful Thing in the World” と言っても良いでしょう。

 

それぞれの登場人物にとっての「靴」とは

 

今回は、幼いチャーリーが父親に教えられた「靴」について着目してみました。

では、他の登場人物にとっての靴とはどのようなものなのでしょうか?最後のパートで歌われているのでみてみましょう。

 

MR. PRICE:
These shoes are symbols of our family’s history

NICOLA:
These shoes will carry me to where I wanna be

YOUNG SIMON:
Feels like I’m dancing

(中略)

YOUNG SIMON:
Don’t you go anywhere ’cause you belong to me

CHARLIE:
You all do realize you’re talking about shoes?

―ブロードウェイミュージカル“Kinky Boots”より “The Most Beautiful Thing in the World”(作詞:Cyndi Lauper)

 

1人ずつみていきましょう。

 

・ チャーリーの父親:靴はうち代々の象徴と言えるもの

 

・ ニコラ:靴は私が行きたい場所へ導いてくれるもの

 

・ 幼いサイモン(ローラ):(靴は)僕を踊る気にさせるもの、(靴よ)どこにも行かないで、君は僕のものなのだから

 

・ 大人になったチャーリー:ねぇ、みんな「靴」のこと話してるって自覚してる?

 

こうやって皆熱っぽく歌っていますが、大人になったチャーリーは既に靴に対して冷めてしまっていることが分かりますね。

 

いかがでしたか?

是非、他の登場人物とも比較して、それぞれにとっての「靴」がどのような存在なのか理解を深めておきましょう。

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