『キンキ―ブーツ』の舞台は、ノーサンプトンに実在した靴メーカー?


ミュージカル『キンキ―ブーツ(Kinky Boots)』が舞台になっているのは、イギリスにある靴の街・ノーサンプトン(Northampton)。
また、モデルとなっている工場も、実在した靴メーカーでした。
ノーサンプトンと言われてもピンとこない方が多いと思いますが、調べて見ると実は「靴」と深い繋がりを持った街だと分かりましたよ。
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Contents:
ノーサンプトンとは靴の街?
『キンキーブーツ』の舞台となるのは、ノーサンプトンという靴の街です。作品内でも、時々街の名前が発せられますよね。
しかし、そもそも下調べをせずに観劇した私は、このノーサンプトンという街がイギリスの街だということすら知りませんでした。
主人公のチャーリーが「僕はロンドンに行くんだ」としきりに言うことで、やっと「あぁ、このお話はイギリスが舞台なんだな…」と分かったほどです。
私に限らず、ノーサンプトンは耳慣れないな…という方も多いはずなので、まずはどこに存在する街なのか知っておきましょう。
場所は次の通りです。ロンドンの北西に位置していることが分かります。
調べてみたところ、ロンドンの67マイル(108km)北西とありますので、日本でいったら東京から富士山や宇都宮市までの距離です。
遠からず近からず…といった距離感ですね。
ノーサンプトン(英: Northampton, 発音: [nɔrˈθæmptən] )は、イングランド中東部に位置するバラかつタウンかつ非都市ディストリクトである。ロンドンの67マイル (108 km)北西、バーミンガムの50マイル (80 km)南東に位置し、ネン川が広がる。面積は80.76km2 (31.18 sq mi)。ノーサンプトンシャー州都である。
-ノーサンプトン(wikipedia)
場所が分かったところで、とても興味深い記述があったのでご紹介します。(引用の色付きは、あきかんによる。)
ジョン・ロブ、クロケット・ジョーンズ、チャーチ、エドワード・グリーン、トリッカーズといった英国を代表する高級靴の製造業者が集中していることでも知られている。
-ノーサンプトン(wikipedia)
へー!
ノーサンプトンは、高級靴の製造業者が集中している街でなんですね!それは知りませんでした。
『キンキーブーツ』のモデルになっているのは「W.J. Brookes Ltd(ブルックス社)」でアールズ・バートンという街に工場を構えていましたが、現存しているノーサンプトンの靴メーカーとしては次が挙げられます。(以下、各ホームページへリンク)
つまり、ブルックス社もこれらのブランドに肩を並べる靴メーカーだった訳ですが、存続が難しく、ドラァグ・クイーン向けのブーツの製造へと変更していったということだったんですね。
この街がどんなところか知ることで、チャーリーとその仲間達がどのような環境かで仕事をしていたのかがイメージできます。
ちなみに、映画『キンキーブーツ』の撮影は、老舗靴ブランド・トリッカーズ(Tricker’s)で行われているそうですよ!
何故靴の街になったのか?
ノーサンプトンが靴の街だということが分かりましたが、もう一歩踏み込んで気になることを解消したいと思います。
それは何故ノーサンプトンが靴の街になったのかということです。
きっかけは意外なことでした。
Over 4,000 pairs of leather shoes and 600 pairs of cavalry jack-boots for the Parliamentary armies were manufactured in Northampton during the Civil War, and a further 2,000 for Cromwell’s New Model Army in 1648. Until well into the 19th century, the shoe industry boomed in and around the town with small manufacturing workshops set up in the surrounding areas.
-Northampton(wikipedia)
イングランド内戦という戦争が1642年にイギリスで起こったのですが、それと大いに関係しているのがノーサンプトンです。
戦地となったということもあるのですが、戦時中ノーサンプトンでは、4,000足以上の革靴と、600足以上の騎兵隊用長靴(ジョッキーブーツ)を製造したそうなんです。
そして19世紀には、ノーサンプトンの靴産業が盛んになった…というわけです。
意外も意外、高級靴のメッカの成り立ちは戦争がきっかけだったんですね。
そうして靴・革産業の地となったノーサンプトンですが、結局指折りのブランドしか残ることはできず、生き残れなかった靴メーカーは、オフィスや宿泊施設、工場労働者の住居へと様変わりしていきました。
Northampton was a major centre of shoemaking and other leather industries, although only specialist shoemaking companies such as Barker, Church’s, Crockett & Jones, Edward Green, Tricker’s, (formerly located in nearby Earls Barton), and Wildsmith, survive. A large number of old shoe factories remain, mostly now converted to offices or accommodation, some of which are surrounded by terraced houses built for factory workers.
-Northampton(wikipedia)
つまり、チャーリーの婚約者であったニコラが提案した(元はチャーリーの父親の構想であった)アパートメント化計画も、歴史的に実際にあったことなんだと分かります。
こうやって歴史を知ると、靴メーカーにとってノーサンプトンで生き残ることは非常に難しいものだったということが良く分かります。
現在では存在しないW.J. Brookes Ltd(ブルックス社)ですが、それでも生き延びようと大きく舵を切ったことは、勇気ある決断だったということが、よりひしひしと伝わってきますね。

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