涙なしでは読めない…「ワン・バイ・ワン」ズールー語の意味を知る

劇団四季ミュージカル『ライオンキング(The Lion King)』より“One by One(ワン・バイ・ワン)”の歌詞を見てみると、何やら馴染のない言語で歌われていて内容を理解することが出来ません。

しかしこの歌詞の意味を知った時、あなたはきっと胸を締め付けられ、アフリカという大地と歴史に想いを馳せることになるでしょう…涙なくしては読めないこの歌詞、一体どんなことが歌われているのでしょうか?

※全体を読みやすくするため記事の構成を変更致しました。(2017.7.3)

ズールー語とは?

ライオンキングの2幕のオープニングと言えば、「ワン・バイ・ワン」ですよね。唯一動物ではなく人間が登場し、鮮やかな衣装と共に現れ、幸せそうに空を舞う鳥たちとともに歌います。しかしその言語はすべてアフリカ語である「ズールー語」で歌われているので、ほとんどの方がどんな内容を歌っているかを理解することができないでしょう。(ズールー語については、こちらの記事をご覧ください。

 

実際その意味を調べてみると…アフリカの壮絶な歴史をベースに歌われていることが分かりました。

あの明るい曲と笑顔の裏に、こんなシリアスな内容が描かれていたなんてと振り返るだけで、胸が締め付けられ涙がこみ上げてきます…行き所のない涙が、ただ、もう、ボロボロとこぼれるばかりです。

今回お世話になったのは、The Lion King WWW Archiveという英語のサイトです。ズールー語と共に英語が併記されていましたので、この英語部分を元に解説していきます。少し長い記事になりますが、これは必読情報です。是非お時間を頂ければと思います。

それではみなさん…心とタオルの準備は宜しいでしょうか?それでは1つずつ説明していきますね。

 

ズールー語の歌詞の意味

One by One(ワン・バイ・ワン)”の歌詞の中身を見てみましょう。ブロックごとに引用していきますよ。まずは始めのブロックです。

 

Ibabeni njalo bakithi(Hold on tight, my people)
Ninga dinwa(Don’t get weary
Ninga phelelwa nga mandla(Don’t lose your strength
Siya ba bona(We can see)
Bebe fun’ ukusi xeda(They wanted to hold us back
One by one
Ngeke ba lunge(They will not succeed
One by one
Sizo nqoba(We will win
One by one
Ngeke ba lunge(They will not succeed
One by one
―ミュージカル “The Lion King” より “One by One”

 

どうです?単語の意味を見て何となく、「あれ?明るい内容じゃないかもしれない…」と気付いたのであれば、正解です。答えを先に言いましょう。

この曲は、アフリカ人が西洋人に奴隷として連れて行かれる歴史を背景に、アフリカ人の誇りを描いた曲なんです。

 

支配下に置かれたりなんかしない

1つずつ見ていきましょう。

my peopleというのは直訳して「私の人々」ですからニュアンス的には「私の仲間」となります。wearyは「うんざりする」なので訳せば「うんざりしないで」ですが、ここは状況的にうんざりする以上の出来事を指すので「諦めないで」が近いと思います。

 

  • Ibabeni njalo bakithi(Hold on tight, my people)
    ⇒しっかり掴まって、私の仲間よ
  • Ninga dinwa(Don’t get weary)
    ⇒決して諦めたりしないで

 

次の部分です。strengthは「強さ」、hold ~ backは「~を支配下に置く」ですから、意味はこうなります。

 

  • Ninga phelelwa nga mandla(Don’t lose your strength)
    ⇒強さを失わないで
  • Siya ba bona(We can see)
    ⇒我らには見える
  • Bebe fun’ ukusi xeda(They wanted to hold us back)
    彼らが私たちを支配下に置きたいということが
  • One by one
    1人ずつ

 

そしてこう続きます。それぞれのフレーズに対してone by oneとあるので、なるべくそれを活かして訳すとすると、こうなるのではと思います。

 

  • Ngeke ba lunge(They will not succeed)
    ⇒彼らは成功なんてしない
  • One by one
    ⇒1人1人では
  • Sizo nqoba(We will win)
    ⇒我らが勝つんだ
  • One by one
    ⇒1人ずつ
  • Ngeke ba lunge(They will not succeed)
    ⇒彼らは成功なんてしない
  • One by one
    ⇒1人1人では

 

…最初部分だけでもう涙です。

真っ向から闘おうという意志の強さと団結を感じます。こう見るとone by oneとは「1人ずつ(アフリカ人を奴隷として)連れていく」という意味を指す一方で、「1人1人の力を合わせていく」という意味も指し、とても奥の深い題名になっていることが分かります。

 

 

自分が何者かを知っている

次のブロックを見てみましょう。

 

Sizo nqoba(We will win)
Ngoba thina(Because)
Siya zazi(We know who we are)

Ngoba thina(Because)
Siya zazi(We know who we are)
―ミュージカル “The Lion King” より “One by One”

 

ここでは直前のブロック“Sizo nqoba(We will win)”に対して更に強い気持ちが加えられています。

 

  • Sizo nqoba(We will win)
    ⇒我らが勝つ
  • Ngoba thina(Because)
    ⇒何故なら
  • Siya zazi(We know who we are)
    ⇒我々は自分達が誰だかを知っているから

 

「どんなこと知っているか」については少し先に出てきますので、次に進みましょう。

 

Zobona bayabaleka(Come and see)
Zobon, zobona(The cowards are running away
―ミュージカル “The Lion King” より “One by One”

 

ここでいうcowards(卑怯者)とは侵略してきた西洋人を指しています。ですから、内容はこうです。

 

  • Zobona bayabaleka(Come and see)
    ⇒来て見てごらん
  • Zobon, zobona(The cowards are running away)
    ⇒卑怯者が逃げていくぞ

 

アフリカ人であることの誇り

そして次が最後のブロックです。ここで先程の“Siya zazi(We know who we are)”の「どんなこと知っているか」の答えが出てきます。

 

Ibala lami(The color of my skin
Elimnyama(That is dark)
Ndiya zidla ngalo(I’m proud of it)

Ibala lami(The color of my skin)
Elimnyama(That is dark)
Ndiza kufa nalo(I will die with it)

Ibala lami(The color of my skin)
Elimnyama(That is dark)
Ndiya zidla ngalo(I’m proud of it)

Kumnandi(Oh yes)
Kwelakakith Eafrica(It’s beautiful in Africa
―ミュージカル “The Lion King” より “One by One”

 

フレーズの各先頭に出てくる“Ibala lami(The color of my skin)”、これはその文字の通り「私の肌の色」という意味です。それに続く文章が2種類ありますね。1つ目はこうです。

 

  • Ibala lami(The color of my skin)
    ⇒私の肌の色
  • Elimnyama(That is dark)
    ⇒それは黒い
  • Ndiya zidla ngalo(I’m proud of it)
    ⇒私はそれが誇りだ

 

2つめはどうでしょう?

 

  • Ibala lami(The color of my skin)
    ⇒私の肌の色
  • Elimnyama(That is dark)
    ⇒それは黒い
  • Ndiza kufa nalo(I will die with it)
    ⇒私はそれと共に死んでいく

 

…涙腺崩壊です。

私はここの歌詞で完全に涙腺崩壊しました。何と強く、美しく、熱い気持ちを持っているんでしょう。“I will die(死んでいく)”、というのは「それ(黒い肌)と共に人生を全うする」という解釈が近いかもしれませんね。そこに誇りを持つし、背を向けない、ということです。

 

アフリカは美しい

そしてこう締めくくります。

 

  • Kumnandi(Oh yes)
    ⇒ああ、そうさ
  • Kwelakakith Eafrica(It’s beautiful in Africa)
    ⇒アフリカはこんなにも美しい

 

何とも勇ましい締めくくり方…!感涙です。言葉が出ない…

 

 

耳に残る独特な呼吸のワケ…

いかがですか?

One by One(ワン・バイ・ワン)”は、アフリカ人の、アフリカ人による、アフリカ人の誇りを、魂を込めてとてもストレートに歌った曲だと分かりました。

そして、これは補足情報ですが、私が劇団四季で働いていた時にこんな話を聞いたことがあります。

One by One(ワン・バイ・ワン)”のオープニングの荒い息遣いは、母の背中におんぶされた子どもが背中越しに聞いた、母の息遣いだと。つまり、子どもをおんぶして、支配者達から全力で逃げている時の息遣い…なんだだそうです。

私はこれを聞いた時に、鳥肌が立ち、二の句が継げなくなりました。そういう色々な歴史的情景が、この音楽にはぎゅっと凝縮されているのです。

 

ディズニーアニメでは描かれない良さを感じて…

もしディズニーアニメ同様、ミュージカル『ライオンキング』にこの曲がなければ衣裳がすごい、演出がすごいだけの作品に留まっていたのかもしれません。素晴らしい作品に、アフリカ血であるこの悲しい過去を盛り込み、高らかに歌いあげながら問題提起をしたからこそ、血の通った作品になったと言えるのではないでしょうか。

だからこそ、このミュージカルは高い評価得て、今もなお観客の心をつかんで止まないのだと思います。

特に本場ではアフリカ系のキャストが歌う訳ですから、よりリアルな体感が出来るのではないかと思います。近い将来、観たいなと思っています。

最後に、この動画で歌っているのが、ズールー語部分を担当したLebo.Mです。力強い歌い方に、アフリカの大地を感じて止みません。

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