「ラフィキの哀悼」ズールー語の意味…ムファサを偲ぶだけでない?

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

劇団四季ミュージカル『ライオンキング(The Lion King)』より「ラフィキの哀悼(Rafiki Mourns)」の歌詞を見てみると、全体がアフリカのズールー語で歌われており、何と歌っているのかを理解することができません…。

しかし調べてみると、思いもよらない発見がありました。

短い歌の中にあらゆる意味が含まれているこの詩を、じっくり一緒に見ていきましょう。

『ライオンキング』のズールー語歌詞は、動物たちの生活とアフリカ人の生活とがダブルミーニングになっている場合が多いです。

ラフィキの哀悼(Rafiki Mourns)」では、歴史の中で亡くなっていったアフリカ人も共に哀悼されていると想定できます。

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ズールー語とは?

ヌーの大暴走に巻きこまれてしまったシンバを守るために、大群に飛び込んだムファサ…。

そんな彼の勇気もむなしく、ムファサはこの世を去ります。

ハラハラドキドキする音楽の後に流れるのが、ラフィキが歌うこの「ラフィキの哀悼(Rafiki Mourns)」です。

悲しみに包まれながら行き場のない感情を高らかに歌い上げますが、ズールー語なので何と歌っているのかが分かりませんよね。

分からないままにしておくのも悔しいので…調べました!

今回お世話になったのは、The Lion King WWW Archiveという英語のサイトです。

ズールー語に英語が併記されていましたので、これを元に解説していきます。

ズールー語についてはこちらで詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

ズールー語の歌詞の意味

ラフィキの哀悼(Rafiki Mourns)」の歌詞の中身を見てみましょう。

この曲は全てズールー語で歌われており、後半は同じフレーズが繰り返し繰り返し歌われています。

Madi ao(Spilled blood)
Leka sebete chia ho oele sebatha(Try courage so the beasts may fall)
Mo leka qeme o tsaba hoa(Those who defy mountains are, in truth, cowards)
Lebo haleng ha o bue ka le ha(Even in anger, you do not speak against wrong…)
Lebo haleng ha o bue ka le ha(Even in anger, you do not speak against wrong…)

Oh, oh

Halala humba heh heh heya heeyahee
Halala humba hela hela hela
Halala humba heh heh heya heeyahee
Halala humba hela hela hela
(Repeat)

―ブロードウェイミュージカル “The Lion King” より “Rafiki Mourns” (作詞:Hans Zimmer and Lebo M)

残念ながら後半のブロックの英訳が見つからなかったので、今回紹介するのは前半のブロックのみになります。

もし何か分かることがあればこちらの記事内で更新します。

何か有力な情報をお持ちの方は、コメント欄からご連絡頂けると嬉しいです。

それでは1つずつ見ていきましょう。

・ spilled blood … ムファサの流された血

spilled blood” は直訳すると「流れた血」ですが、シーンに置き換えると「スカー達の手によって傷つけられ、ムファサの血が流れた」ことになりますから、ニュアンスとしてはムファサの流された血で良いでしょう。

・ Try courage so the beasts may fall … (我らの)勇気を試そう そうすれば悪は滅びる

fall” にはあらゆる意味がありますが、ここで「組織が滅びる」という意味で使われていると考えるといいですね。

悪とはスカー達のことでしょうか。

・ Those who defy mountains are, in truth, cowards … 立ちはだかる壁に立ち向かえないような奴らは臆病者だ

“mountains” は「山」ですが、この場面では「立ちはだかる壁」と解釈しても良いでしょう。

・ Even in anger, you do not speak against wrong … 怒りの真っただ中にいようとも、不正に反してはいけない

恐らく「怒りの感情にまかせて対抗心を抱いてはいけない」ということだと思います。

何事があっても感情に身を任せてはいけない、冷静さを失ってはいけないということです。

ズールー語に含まれる2重の意味

さて、ここまで読み解いてみて少し疑問に思ったことがあります。

2行目の “Leka sebete chia ho oele sebatha(Try courage so the beasts may fall/勇気を試そう そうすれば悪は滅びる)” の部分です。

「悪は滅びる」とありますが、この時点で動物達はムファサの死は企てられたものではなく、事故死だと思っています。

もちろん、シンバもそうです。

そう考えると、この歌はムファサの死に重ねて哀悼している人がいると分かります。

では、誰を哀悼しているのか?私の考えでは悲しい歴史の中で亡くなっていった多くのアフリカ人です。

何故そう感じたか…

まずは先にも書いた通り、2行目が『ライオンキング』話しの筋と合わないなと感じたことです。

もう1つはズールー語で歌われている「ワン・バイ・ワン(One by One)」の情景と重なるところがあったからです。

ワン・バイ・ワン(One by One)」は、アフリカ人が西洋人に奴隷として連れて行かれる歴史を背景に、アフリカ人の誇りを歌った曲です。

その中には、アフリカ人が敵に屈することなく立ち向かう姿と、自らの人種を誇りに思う姿が描かれています。

その中には敵を「臆病者」とする表現であったり、「諦めずに敵に立ち向かうこと」などが書かれています。

そういうことを思い出しながら「ラフィキの哀悼(Rafiki Mourns)」を読み直してみると、私にはこう読みとれるのです。

・ Spilled blood … 傷つけられ血を流し、過去に死んでいった仲間たちの死

・ Try courage so the beasts may fall … 勇気を示せ、そうすれば野獣のような敵は屈するだろうから

・ Those who defy mountains are, in truth, cowards … 困難の山々も立ち向かえないような奴らは、正直言って臆病者だ

・ Even in anger, you do not speak against wrong … 怒りの真っただ中にいたとしても、感情をむき出しにしたまま対抗心を抱いてはいけない

これはあくまでも私の解釈ですが、ニュアンスとしては大きく違わないと思っています。

もしこのような意味なのであれば、この曲はムファサ1人でなく、過去に亡くなっていった多くのアフリカ人も哀悼していることになり、とても意味の深いシーンになっているのだと分かります。

ワン・バイ・ワン(One by One)」の歌詞の意味を知るとその関係性をより強く感じることが出来るはずです。是非併せてご覧くださいね。

ラフィキの哀悼(Rafiki Mourns)」の、他の記事はこちらから。

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!

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