『SIX』”Heart of Stone”の歌詞で歌われる妻の本音

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

ミュージカル『シックス(SIX)』より “Heart of Stone” の英語歌詞を見てみると、ヘンリ8世の3人目の妻ジェーン・シーモア(Jane Seymour)の本音が歌われていることが分かります。

ヘンリ8世が望んだ男子を出産したものの、そのまま亡くなった彼女の本音を見ていきましょう。

ジェーン・シーモアの詳しい人物像は、こちらの記事でまとめています。

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ジェーン・シーモアから見たヘンリ8世の姿

ヘンリ8世に物申すことなく、物静かだったと言われる3人目の妻・ジェーン・シーモア

彼女が歌う”Heart of Stone” は、ゆっくりと穏やかですが、その中には非常に強い主張を見ることができます。

ヘンリ8世の感情の起伏の激しさ

冒頭で歌うのは、ヘンリ8世の性格についてです。

You’ve got a good heart
But I know it changes
A restless tide, untameable
You came my way
And I knew a storm could come too
You’d lift me high, or let me fall

But I took your hand
Promised I’d withstand
Any blaze you blew my way
‘Cause something inside
It solidified
And I knew I’d always stay

―ウェストエンドミュージカル“SIX”より “Heart of Stone”(作詞:Toby Marlow, Lucy Moss)

要約するとこのようなことが歌われています。

  • 良い心の持ち主だけど、豹変することを私は知っている
  • 落ち着きがなく、思い通りには付き合えない
  • 私の前に現れれば、嵐もやってくるのだと同時に思う
  • あなたは私を上げることもすれば、下げることもするの
  • それでも私はあなたの手をとる
  • 私は耐えると決めたから
  • 私の前で怒りに燃え盛ろうと
  • 私の中の何かが固まっているから
  • 私はここに留まっているの

こうやって内容を見ると、モラルハラスメントの環境下にいる妻を想像させますよね。

史実を読めばヘンリ8世がそのような人柄だったのだろうと容易に想像できますが、それを非常に分かりやすい表現でジェーンは歌っています。

「私の中の何かが」とは「決心」や「覚悟」だと思いますが、彼女の中で、王家に嫁ぐという意味の重さが感じられますね。

息子が生まれたことに対する思い

また、息子が生まれたことに対してはこのように歌われています。

You say we’re perfect
A perfect family
You hold us close for the world to see
And when I say you’re the only one I’ve ever loved
I mean those words truthfully

But I know, without my son
Your love could disappear
And no, it isn’t fair
But I don’t care
‘Cause my love will still be here

―ウェストエンドミュージカル“SIX”より “Heart of Stone”(作詞:Toby Marlow, Lucy Moss)

ここで注目したいのは3行目からです。

ヘンリ8世は待望の息子を授かり、自らの家族を「完璧な家族だ」と言いますが、ジェーンにはこのような思いがあります。

  • 私が今までの人生で「愛したのはあなた以外にいない」と口にするのは
  • それが事実だからなの
  • でも知っているわ、息子がいなければあなたの愛を失うと
  • それが不公平だって分かっているけれど、私は気にしない
  • だって、私の愛は、まだここにあるから

これは辛いですよね。息子ありきの妻…といったところでしょうか。

しかし、こういった現実があるのは、昔も今も変わらないように感じます。

息子出産後に死にゆくジェーンの想い

ヘンリ8世が待ちに待った男子を出産するも、産後の肥立ちが悪くジェーンはその後亡くなってしまいます。

後半では、息子へ託す想いを死にゆくジェーンは歌っています。

Soon I’ll have to go
I’ll never see him grow
But I hope my son will know
He’ll never be alone
‘Cause like a river runs dry
And leaves its scars behind
I’ll be by your side
‘Cause my love is set in stone

―ウェストエンドミュージカル“SIX”より “Heart of Stone”(作詞:Toby Marlow, Lucy Moss)

意味はこうなっています。

  • 間もなく私はこの世を去らなければいけない
  • 私は彼が育つところを見ることはできない
  • でも息子が知って欲しいと願っている
  • 彼がひとりぼっちではないということを
  • だって川が干上がって
  • (水はなくなって川の)爪痕しか残さないとしても
  • 私はあなたのそばにいる
  • だって私の愛は変えられないのだから

この歌詞で面白いのは、最後が “set in stone(変えられない)” という熟語になっているところです。

この曲名は “Heart of Stone(石の心)” ですが、“stone” にかけた熟語を使って愛を表現しているところに、表現の広がりを感じますね。

サビで歌われていること

Heart of Stone” で歌われるサビでは、ジェーンの最も強い想いが歌われているといっても過言ではありません。

You can build me up
You can tear me down
You can try but I’m unbreakable
You can do your best
But I’ll stand the test
You’ll find that I’m unshakeable
When the fire’s burnt
When the wind has blown
When the water’s dried
You’ll still find stone
My heart of stone

―ウェストエンドミュージカル“SIX”より “Heart of Stone”(作詞:Toby Marlow, Lucy Moss)

意味はこうです。

  • あなたは私を褒め称えることができる
  • あなたは私を切り裂くこともできる
  • 試すことはできるけど私は壊れることなどないの
  • あなたは私を壊そうとベストを尽くすでしょう
  • けれど私は試練に耐えてみせる
  • そしてあなたは私が揺るぎないと分かるはず
  • 炎が燃え尽きて
  • 水が乾ききった時
  • 石は見つけることができるでしょう
  • それが私の石の心(心の強さ)なの

これは素晴らしい表現ですよね。読んだ時に泣きました。

ヘンリ8世に逆らわなかった彼女が、どんなに強い意志を持って短い夫婦生活を生き抜いたかが分かります。

また、これにかぶるように歌われる “Can’t break me(私のことは打ち砕けない)” にも強さを感じますね。

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!