劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より「奇跡御殿(The Court of Miracles)」の英語歌詞の途中でなされる会話を見てみると、何やらエスメラルダから託されたネックレスのお守りの話しをしています。
このお守りの示す場所は…もしかして「Court of Miracles(奇跡御殿)」??そう思い至る理由をご説明します。
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中世ヨーロッパにおける「身体障がい者」の扱いはどのようなものだったのか?「ジプシー」はなぜ迫害され、「魔女狩り」はどのようにして起こったのか?
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ネックレスの見た目
“Flight into Egypt(エジプトへの逃避)” の歌詞の途中に、こんな会話がなされています。参考にしたサイトはGENIUSです。
QUASIMODO (spoken):
But even if I could go out there – how can I find her?CONGREGATION (spoken):
The amulet she gave you!
But what is it? Just a web and a jewel?
It doesn’t mean anything!―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “The Court of Miracles” (作詞:Stephen Schwartz)
まずここで会話されているのは、カジモドが外に出たとして、どうやってエスメラルダを見つけられるのかという問題についてです。そう不安を吐露するカジモドに対して石像達は、「エスメラルダがくれたお守りだよ!」と言います。
実際、観客からはお守りがどんな見た目かは分かりませんが、 “Just a web and a jewel” の部分で見た目が説明されています。web(蜘蛛の巣状)の見た目にa jewel(1つの宝石)ですので、ドリームキャッチャーのような見た目なのではないかと思われます。(ドリームキャッチャーの見た目については、次の画像一覧をご覧ください:ドリームキャッチャー(google画像検索))
何を意味しているか
しかし、そのお守りが何を意味するかは、最初その形を見ただけでは分かりません。会話はこう続きます。
CONGREGATION:
No, it must be a clue made with guileandart
And she gave it to you because she knows you’resmart
Think, Quasimodo, is it hopeless
Or can you see in it something you’ve seen before?QUASIMODO (spoken):
Seen before…wait, I know this! Look, at this line, that’s a bridge, that’s a street – and this jewelQUASIMODO:
It must show where we’re supposed to meet―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Flight Into Egypt” (作詞:Stephen Schwartz)
- guile … 策略
(guileとは「悪知恵、狡猾」という意味ですが、ここでは頭を働かせた「策略」という意味が一番適当だと思われます。) - art … 技、技巧
(artとは「芸術、美術」という意味ですが、ここでは「技巧」という意味が一番適当だと思われます。)
1人の石像は “it must be a clue made with guile and art(このお守りは、巧みな策略と技巧で作られたヒントのはずだ)” と言っています。
つまり、このお守りの形は何か意味を持っているはずだと言っているんですね。そして、カジモドが賢いからエスメラルダは渡したんだろう( “she gave it to you because she knows you’re smart” )ということも言っています。「何か見覚えがないか?」と石造たちが聞いているのが “can you see in it something you’ve seen before?” の部分ですね。
そして、カジモドは気付きます。蜘蛛の巣状になっている部分は橋(a bridge)や通り(a street)、そして宝石の部分は “where we’re supposed to meet” 、つまりカジモドとエスメラルダが落ち合う場所だと!そして、会話部分は次の内容で締めくくられます。
CONGREGATION:
You’ve done it, Quasimodo
This we’re certain ofQUASIMODO (spoken):
It’s a map! It’s a map!QUASIMODO:
Look, it’s the city scene from aboveCONGREGATION:
It’s a map of the city from aboveQUASIMODO (spoken):
I’ll do it! I’ll go out there while it’s dark, I’ll find Esmeralda, and bring her back!―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Flight Into Egypt” (作詞:Stephen Schwartz)
エスメラルダの渡したネックレスのお守りは「map(地図)」になっているたのですね。パリを上から見た時の地図…ノートルダム大聖堂の上からいつもパリを見ているカジモドならば、きっと分かってくれると信じエスメラルダは託したのでしょう。
その後カジモドとフィーバスがネックレスを元に辿りついた後「奇跡御殿(The Court of Miracles)」のシーンが始まります。ですから、ネックレスが示していた場所はThe Court of Miracles(奇跡御殿)だと言って良いでしょう。
エスメラルダが身体障がい者のふりをしてお金を稼いでいたとは考え難いので、ジプシー仲間と生活をともにする上でこの場所にいたのだと考えられますね。細かい描写があらゆる曲につながっていて面白い…鳥肌が立ちます!
尚、実在したThe Court of Miracles(奇跡御殿)がどういう場所なのか詳しく知りたい方は、併せてこちらの記事をご覧下さい。より理解を深められますよ。
お守りが、エスメラルダの名前の由来?
(2017.7.31追記)
また、原作『ノートルダム・ド・パリ』にこのお守りの描写がありました。それがエスメラルダの名前の由来らしいんです…気になる方は是非押さえて下さいね!
「奇跡御殿(The Court of Miracles)」の、他の記事はこちらから。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。