ハミルトンとバーは、アメリカ初の殺人裁判を担当した弁護士だった

ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より “Non-Stop” の英語歌詞を見てみると、独立戦争が終わった後ハミルトンは弁護士になったと歌われています。

彼はどのような弁護士で、どのような事件を担当したのでしょうか?

Music from the Musical

・作品名:ハミルトン(Hamilton)

・曲名:Non-Stop

・カラオケ:Non-Stop (Instrumental)

・作詞:Lin-Manuel Miranda

アルバムを視聴する/楽譜を見る ・アルバム(英語):Hamilton
・カラオケ:The Hamilton Instrumentals
・楽譜:

 

同じ時期に弁護士になるハミルトンとアーロン・バー

 

この曲、好きです。

タイトル通り “Non-Stop(ノンストップ)” な感じで歌詞がまくし立てられ、戦争が終わっても前進し続けるハミルトンについて歌われています。

そんな歌の始まりもまた、バーの皮肉から始まっています。

 

BURR:
After the war I went back to New York

HAMILTON:
A-After the war I went back to New York

BURR:
I finished up my studies and I practiced law

HAMILTON:
I practiced law, Burr worked next door

BURR:
Even though we started at the very same time
Alexander Hamilton began to climb
How to account for his rise to the top?
Maaaaan, the man is Non-stop!

―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Non-Stop” (作詞:Lin-Manuel Miranda)

 

戦争の後、バーもハミルトンもニューヨークへ戻りました。

そこで何をしていたのかというと “practice law“、つまり「弁護士として開業した」とのこと。

 

ハミルトンが “Burr worked next door(バーは隣の部屋で働いている)” と歌ていますが、この事実は定かではありません。

ただ、同じ仕事を、同じタイミングで開業し、近くで働いていたならば、はじめからハミルトンをライバル視していたバーにとっては、敵対心は強まるばかりです。

その敵対心は、これらのフレーズから手に取るように分かります。

 

・ Even though we started at the very same time … 全く同じ時期に(弁護士業を)始めたにも関わらず

 

・ Alexander Hamilton began to climb … ハミルトンははい上がり始めた

 

・ How to account for his rise to the top? … 彼がトップにのぼり詰めるのをどう説明したらいいんだ?

 

・ Maaaaan, the man is Non-stop! … まじかよ、こいつ本当に止まらねぇ

 

結婚をしたのも、ワシントンと仕事をしたのも、弁護士として頭角を現し始めたのも、いつもハミルトンの方が先

そんな気持ちを含んで、もう笑う事しかできないといった感じで歌っているバーの歌い方が私は好きです。

そして、その感情に気付いていないハミルトンの歌い方も…。

 

ちなみに、ハミルトンが開業したのは第一子フィリップが生まれた年と同じで、ハミルトンが若干27歳の時のことでした。

 

1782 / 27 years old
The Hamiltons’ first child, Philip, is born and the family moves in with her parents for 2 years. Hamilton does accelerated study for the bar and opens up a law practice in Albany, as does Aaron Burr at about the same time.

The Hamilton Cookbook: Cooking, Eating, and Entertaining in Hamilton’s World(p.19)

 

また、弁護士業をする傍ら、経済、貿易、税に関する執筆活動もしていたようです。

また彼が司法試験の勉強法をまとめた38項目177ページの本は、あまりに素晴らしい出来だったために、後に多くの人が使うこととなったそうですよ。

 

Alexander Hamilton became a lawyer, writing his own 177-page, 38-topic study guide for the bar examination that was so impresive, others used it as their own study guide for years afterward. After joining the bar, he opened a law practice in Albany and wrote essays on economics, trade, and taxation on the side.

The Hamilton Cookbook: Cooking, Eating, and Entertaining in Hamilton’s World(p.8)

 

 

2人で携わった殺人事件

アメリカ初の殺人裁判

 

そんなライバル同士の2人が、共同弁護士としてアメリカ初の殺人裁判で法廷に立つことになります。

それがこの歌詞から読み取れます。

 

HAMILTON:
Gentlemen of the jury, I’m curious, bear with me
Are you aware that we’re making hist’ry?
This is the first murder trial of our brand-new nation

HAMILTON:
The liberty behind
Deliberation

HAMILTON:
I intend to prove beyond a shadow of a doubt
With my assistant counsel

BURR:
Co-counsel
Hamilton, sit down
Our client Levi Weeks is innocent. Call your first witness
That’s all you had to say!

HAMILTON:
Okay!
One more thing—

BURR:
Why do you assume you’re the smartest in the room?
Why do you assume you’re the smartest in the room?
Why do you assume you’re the smartest in the room?
Soon that attitude may be your doom!

―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Non-Stop” (作詞:Lin-Manuel Miranda)

 

3行目の “murder trial” とは「殺人裁判(公判)」のことで、 “brand-new nation” は「真新しい」という意味ですから「これは我々の真新しい国にとって初めての殺人裁判です」と言っていることが分かります。

このことについてハミルトンは熱っぽく前後で語っています。大まかに言うとこういうことです。

 

・ 陪審員の皆さん、自覚はありますか?

 

・ 我々は今歴史を作っているのです

 

・ これは我々の新しい国アメリカにとって、初の殺人裁判です。

 

・ 審議を後ろ盾にした権利があります。

 

これだけでも、聴衆としてはお腹いっぱいな上に、こんなことまで言います。

 

・ I intend to prove beyond a shadow of a doubt with my assistant counsel … 私は弁護士補佐(アーロン・バー)と共に、この虚偽の闇の背景にある事実を証明してみせます。

 

いかにもキザな調子で言っていますが、ハミルトンとバーは共同弁護士なので立場は対等

バーは「弁護士補佐(assistant counsel)」などではないので、バーが訂正しています。 “Co-counsel(共同弁護士)” だと(笑)。

 

本編には大きく関係してこない史実を、このようなかたちで歌詞の中に取り込む箇所はそこかしこに見受けられますが、こういったことを盛り込みながらハミルトンとバーの性格の違いを表現していく手法、私は大好きです。

そして、熱っぽく殺人裁判について語るハミルトンに対して、バーはこう言っています。

 

・ Hamilton, sit down … ハミルトン、座るんだ

 

・ Our client Levi Weeks is innocent … 「我々の依頼者Levi Weeksは無罪です。

 

・ Call your first witness … 最初の目撃者を読んでください。」

 

・ That’s all you had to say! … それだけを言えばいいんだ

 

この二者の対比、面白いですよね。

 

どのような殺人事件だったのか

 

では、このLevi Weeksという人物は無罪だったのか?

いえ、違います。結論から言うと、彼は有罪でした。だからこそハミルトンとバーが雇われたのです。

彼の名前で検索すると、この事件の真相がよく分かります。

 

Weeks was accused of murdering Gulielma “Elma” Sands, a young woman whom he had been courting. Elma disappeared on the evening of December 22, 1799. Some of her possessions were found two days later near the recently created Manhattan Well in Lispenard Meadows, located in today’s SoHo near the intersection of Greene and Spring Streets. Her body was recovered from the well on January 2, 1800. Before leaving her boarding house on the 22nd, Elma told her cousin Catherine Sands that she and Levi were to be secretly married that night.
The trial, which took place on March 31 and April 1, 1800, was sensational. Through his brother’s connections and wealth, Weeks retained three of New York’s most prominent attorneys, Henry Brockholst Livingston, Aaron Burr, and Alexander Hamilton. Chief Justice John Lansing, Jr. presided on the bench, and future Mayor of New York Cadwallader David Colden was the prosecutor.
Although Elma was seen leaving with Weeks and a witness claimed to have seen Weeks making measurements at the well the Sunday before the murder, Weeks was acquitted after only 5 minutes of jury deliberation.

Levi Weeks(wikipedia)

 

今も昔もこういう悲惨な事件はあるんだなぁ…とつくづく思わせられるこの事件。

要点をまとめます。

 

Elmaという女性に言い寄っていたLevi。1799年12月22日にElmaはいとこにLeviと両親には内緒で結婚すると言い残して下宿屋を後にしたが、その後行方不明となった。

 

1800年1月2日、現在のソーホーにあった井戸から彼女の遺体が見つかり、裁判は1800年3月31日と4月1日に行われた。

 

しかし、この裁判はかなり世間を騒がせた。Leviの兄が裕福でコネがあったことから、ハミルトンとバーを含む3人を代理人として雇い、その他の法廷の人選も行った。

 

結局、ElmaとLeviが一緒にいるところを目撃した者や、Leviが井戸の測定をしていた目撃者がいたにも関わらず、たった5分の審議で無罪が言い渡された。

 

この事件を第3者的に見ると、明らか被害者に同情しますよね。

しかし、容疑者側の弁護士としてこハミルトンとバーが選ばれたことは、目撃証言を裏返せるだけの腕があったということです。

こういった史実からも、2人がどれだけ敏腕な弁護士だったかという事が分かりますね。

 

事件現場となったManhattan Wellについては、こちらのまとめをご覧くださいね。

 

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