Sugar Daddyの意味を知って理解!ヘドウィグとルーサーの甘い関係

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ(Hedwig and the Angry Inch)』より “Sugar Daddy” の英語歌詞を見てみると、ヘドウィグがアメリカ軍人・ルーサーに何を求めているかが分かります。

様々なお菓子が登場する中で歌われる内容は、実はとても卑猥

この先を読み進めるかどうかは、あなたの判断にお任せします…(苦笑)。

※こちらの記事をお読みいただくと、より理解が深まります。是非、事前にお読みください!

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“Sugar Daddy”とは何か

 

歌詞の内容に入る前に、まずは曲名 “Sugar Daddy” が何を意味しているか理解するところから始めましょう。

Sugar Daddy(お砂糖パパ)” とは、次のような意味です。

 

  • 男性のパトロン
  • 交際またはセックスを目的に若者(特に若い女性)に金品を貢ぐ中高年の男

 

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』では、アメリカ軍人・ルーサーを指しており、後者の意味で使われています。

ルーサーとの出会いは、ヘドウィグがベルリンの壁付近で日光浴をしていたことがきっかけでした。

全裸でうつ伏せになっていたところに目を付け、女性だと思って声をかけたルーサーでしたが、その後話しかけた相手が男性だと知ります。

ヘドウィグはゲイで、東ベルリンでの生活にも閉塞感を感じており、ルーサーを恋愛対象と見ると同時に、国外脱出できる手段だと見るようになります。

結果、ヘドウィグは性別適合手術を受け東ベルリンを後にしますが、 “Sugar Daddy” ではルーサーを自分の虜にするまでの過程が歌われています。

なかなかの内容です。どうぞお楽しみください(笑)!

 

甘党のヘドウィグの好きなものは何か?それはお菓子ではない

 

歌い出しから見ていきましょう。

 

[HEDWIG] I’ve got a sweet tooth
For licorice drops and jelly roll
Hey, sugar daddy
Hansel needs some sugar in his bowl
I’ll lay out fine china on the linen
And polish up the chrome

[HEDWIG with YITZHAK] If you’ve got some sugar for me
Sugar daddy, bring it home

Black strap molasses
You’re my orange blossom honey bear

―ブロードウェイミュージカル“Hedwig and the Angry Inch”より “Sugar Daddy”(作詞:Stephen Trask)

 

意味はこうです。(ハンセルはヘドウィグの本名)

 

  • 僕は甘党でね
  • 例えばリコリス菓子とかジェリーロール(ゼリーを塗って巻いたカステラ)みたいなものがね
  • ねえ、お砂糖パパ
  • ハンセルはお椀いっぱいの甘いモノが欲しいんだよ
  • リネンの上に陶器を並べて
  • クロムメッキを磨くからさ
  • 甘いモノを持ってきてよ
  • お砂糖パパ、家に持って来てよ
  • 糸を引いた黒糖蜜とか
  • あんたはオレンジのハニーベアーだよ

 

こうやって見ると何てことはない歌詞ですよね。

ルーサー、僕は甘党なんだよ。良い子にしているから、甘いモノを沢山持ってきてよ」とねだっているだけの歌詞になります。

お菓子の種類が聞きなれないくらいで、何ら問題のない歌詞に見えますよね。

 

  • licorice drops … スペインカンゾウの根と、アニスオイルで味付けされた菓子。食感は飴よりグミに近く、光沢を帯びた真っ黒な色をしている。
  • jelly roll … ゼリーを塗って巻いたカステラ

 

 

しかし “Sugar Daddy” が「セックスを目的に、若者に貢ぐ中高年男性」を意味していることから分かる通り、この歌詞は基本全て「セックス(性交)」に関わる内容だろうことが予測されるわけです。

そこで1つずつ単語を調べてみました。

するとどうでしょうか?出てくる、出てくる、隠語の数々(爆)。

 

  • jelly roll … 女性性器、性の対象としての女、愛人、精力絶倫の男
  • sugar … 甘言、お世辞、相手の心をひきつけたりする手段として使う、うまい(聞き手に気持よい)言葉。

 

なーるーほーどー…!

また「糸を引いた糖蜜」は、雰囲気的に「射精/精液」ではないかなと考えています。

つまり、冒頭の歌詞は要約するとこうなります。(ニュアンス、意訳含む)

 

  • 僕は甘いモノ(セックス)が好きでね
  • 例えば柔らかい触感(男性器?)とか精力絶倫な(セックスに強い)男がね
  • ねえ、僕のおじ様
  • 良い子にしていてあげるから
  • お世辞の一言や二言持ってきてよ
  • 糸を引いた精液とか
  • ルーサー、あんたは僕のハニーだよ

 

凄い出だしですね(爆)。

加えて、ハンセルの欲望は止まらず、求めるものはお菓子に留まらず、香水ブランドの下着なんかも求めたりするわけです。

 

  • Versace blue jeans … ヴェルサーチ・ブルー・ジーンズ
  • Black designer underwear … デザイナーズブランドの黒の下着

 

 

そして2人のセックスについては、こんなふうに歌われています。

 

[HEDWIG] We’ll dress up like the disco-dancing
Jet-set in Milan and Rome

[HEDWIG with YITZHAK] If you’ve got some sugar for me
Sugar Daddy, bring it home

Oh, the thrill of control
Like the rush of rock and roll
It’s the sweetest taste I’ve known

―ブロードウェイミュージカル“Hedwig and the Angry Inch”より “Sugar Daddy”(作詞:Stephen Trask)

 

要約するとこのような意味になります。

 

  • ミラノやローマのジェット族(ジェット機などで豪快に遊び回る富裕な有閑階級)みたいに
  • ディスコで踊る時みたいに着飾って
  • あぁ、抑圧の快感
  • ロックンロールのような疾走感に
  • これが僕の知っている一番甘い味

 

ここでは抑圧と疾走感という言葉で、セックスの快感を表現していますね。

そして度々登場する “lick it Daddy” は「舐めてよ、おじ様」といった意味なので、「フェラチオ」を意味していると分かります。

何故、そう言い切れるのかと言うと、ヘドウィグが求める品々の中に、サラッと「口内洗浄器」が入っているからです(笑)。

 

  • Whiskey … ウィスキー
  • French cigarettes … フランス製の煙草
  • A motorbike … モーターバイク(小型軽量オートバイ)
  • high-speed jets … 高速ジェット
  • A Waterpik … 口腔洗浄器
  • a Cuisinart … クイジナート(アメリカの調理用品ブランド)
  • a hypo-allergenic dog … 低アレルギー性の犬種
  • all the luxuries of the modern age … 現代における全ての贅沢品
  • Every item on every page in the Lillian Vernon catalogue … リリアン・バーノン(庭用品、子供用品、ファッションアクセサリー製品を販売するアメリカのカタログ販売業)のカタログに載っている全てのもの

 

面白い歌詞ですね(笑)。

アメリカのブランド、クイジナートリリアン・バーノンの雰囲気は、こちらをご覧ください。

 

 
 

ヘドウィグはルーサーの女神

 

終盤で、ヘドウィグは自身をこのように表現します。

 

[HEDWIG] I’ll be your Venus on a chocolate clam shell
Rising on a sea of marshmallow foam

―ブロードウェイミュージカル“Hedwig and the Angry Inch”より “Sugar Daddy”(作詞:Stephen Trask)

 

意味はこうで、名画『ヴィーナスの誕生』(サンドロ・ボッティチェッリ画)をイメージしたものだと分かります。

 

  • 私はチョコレートの貝殻の上に立ったヴィーナス
  • マシュマロで泡立つ海から現れるの

 

ヘドウィグは、ルーサーが虜となる美しい女神だという訳ですね。

 

スルリと入れる東ドイツへの皮肉

 

中盤、セックスを「抑圧と疾走感」で表現していた箇所がありましたが、終盤でこの「抑圧」を東ドイツの情勢と重ねて皮肉交じり歌う箇所があります。

 

It’s our tradition to control
Like Erich Honecker and Helmut Kohl
From the Ukraine to the Rhone

―ブロードウェイミュージカル“Hedwig and the Angry Inch”より “Sugar Daddy”(作詞:Stephen Trask)

 

意味はこうです。

 

  • 抑圧するのが私たちの伝統よ
  • まるでエーリッヒ・ホーネッカーとヘルムート・コールのように
  • ウクライナからローヌまで

 

ホーネッカーもコールも東ドイツの政治家で、ここで歌われることは、東ドイツとは抑圧によって成り立たせていた体制にあったことを非難していると受け取って良いでしょう。

それを受けて、ヘドウィグの “bring it home(甘いモノを持って帰ってきて)” という歌詞は、最後 “bring me home(私をアメリカに持ち帰って)” という歌詞に変わり、ルーサーと共に国外に出たいという意志を受け取ることができます。

いかがでしたか?

表面的には甘ったるいお菓子が並ぶ一方で、その内容は非常な過激な内容でした。

ダブルミーニングを押さえて、この曲のきわどさを楽しみましょう。

 

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!

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