ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ(Hedwig and the Angry Inch)』より “Wicked Little Town” の英語歌詞を見てみると、トミーの心を開く内容になっていることが分かります。
トミーがどのような少年で、ヘドウィグがどんなことを歌ったのか見ていきましょう。
※こちらの記事をお読みいただくと、より理解が深まります。是非、事前にお読みください!
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“Wicked Little Town” の意味
“Wicked Little Town” とは「邪悪な小さな街」という意味です。
この街の明確な定義はありませんが、私はヘドウィグやトミーが生きている日常世界のことを指していると考えています。
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』では、愛を語るとき、神話や聖書を用いた表現がよく登場します。
- ヘドウィグ … プラトンの『饗宴』より、アリストファネスが説いた神話(「愛の起源」の基となる物語)
- トミー … 旧約聖書より「アダムとイヴ」
これらの世界観は、2人が生きている現実とはかけ離れた世界です。
だからこそ、清らかでもなければ、開かれた世界でもない現実を「邪悪な小さな街(”Wicked Little Town“)」と表現しているのだと考えています。
ヘドウィグがトミーに伝えたいこと
トミーは、ルーサーと離婚したヘドウィグがベビーシッターをすることになった家の息子です。
抑圧的な両親のもとで暮らし、どこか孤独な16歳の少年でした。
そんなトミーにヘドウィグが初めて歌ったのが “Wicked Little Town” でした。
“Wicked Little Town” を聴いたことによってトミーはヘドウィグに心を開き、自身の考えや夢を語るようになります。
しかし、何故トミーはこの曲によって心を開くようになったのでしょうか?
それは “Wicked Little Town” が、トミーの心を洗うような曲だったからでしょう。
トミーにあったのは親からの干渉だけで、精神的な自由というものがありませんでした。
しかし、そんな彼に対してヘドウィグはこう歌います。
You know the sun is in your eyes
And hurricanes and rains
Black and cloudy skiesYou’re running up and down that hill
You turn it on and off at will
There’s nothing here to thrill or bring you down
And if you’ve got no other choice
You know you can follow my voice
Through the dark turns and noise of this wicked little town―ブロードウェイミュージカル“Hedwig and the Angry Inch”より “Wicked Little Town”(作詞:Stephen Trask)
意味は次の通りで、前半は「何事も自分の意志で決めることができる」こと、後半では「それでも自分を見失ったら、私の声を頼りにして欲しい」と歌っています。
- あなたの瞳の中に太陽、台風、雨、そしてどんよりとした曇り空があることをあなた知っている
- あなたはその丘を駆け上がったり下りたりして
- 自分の意志でやるかやらないかを決めることができる
- ここにはあなたを興奮させたり落ち込ませたりするものはない
- そしてもし他に選択肢がないのなら
- あなたは私の声を頼りにすればいい
- この邪悪な小さな町の暗い曲がり角と雑音を抜けて(聴こえる私の声に)
本来、物事は自分の意志で決定でき、現実世界は心を過度に刺激するものではないはずです。
しかし、それでも現実世界は「邪悪な小さな街(”Wicked Little Town“)」だから、暗闇と雑音に紛れた私の声を探してみて欲しいと歌っているのです。
この歌によってトミーとヘドウィグの距離は縮まりますが、距離が縮まったことにより、ヘドウィグの秘密が知られてしまいます。
これによって2人に距離はできてしまいますが、エンディングでは、トミーがヘドウィグの心を開きます。
“Wicked Little Town” は “Wicked Little Town(Reprise)” と対で聴くことによって、初めてそのメッセージに深みが感じられる曲です。
是非、ヘドウィグがトミーに歌う “Wicked Little Town” と、トミーがヘドウィグに歌う “Wicked Little Town(Reprise)” を比較してみてくださいね。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。