「壁の向こうへ」に注目!日本語と英語で異なるジャスミンとの会話

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

劇団四季ミュージカル『アラジン(Aladdin)』より「壁の向こうへ(These Palace Walls)」 の英語歌詞を見てみると、女中たちがジャスミンに助言を行うパートがあります。

4人のやりとりは全体的にとても和やかなシーンだと記憶している方も多いかもしれませんが、英語版ではジャスミンに対して自立するようはっきり伝える内容になっていましたよ。


『ジーザス・クライスト=スーパースター』の楽譜をまとめました!

『ジーザス・クライスト=スーパースター』の曲を歌いたい・弾きたいという方は、こちらのブログをご覧ください。

『ジーザス・クライスト=スーパースター』の解説・考察本を執筆しました!

イエス・キリスト最後の7日間とは、どのような日々だったのか?何がイエスを人気にし、なぜイエスは十字架にかかることになったのか?

ミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター』の奥深さを楽しみたい初心者に向けた、解説・考察本。

Kindle(電子書籍)ペーパーバック(紙書籍)、いずれも Amazon で販売中。

Kindle Unlimitedを初めてご利用の方は、体験期間中に0円で読書可能

 

3人の女中はどんな存在?

 

3人の女中は、ジャスミンにとって良き存在に見受けられますね。

ジャスミンは自分の胸の内を素直に告白することができ、そして互いに意見を求め合うこともできます。

自由に出回ることの出来ない宮殿内では、ジャスミンにとって友達のような、カウンセラーのような、母のような存在かもしれません。

しかし、この3人の女中というのは、ただ優しいだけの存在ではありません。

ジャスミンは一見とても強い女性のように見受けられますが、その立場のせいか、優柔不断で深く悩んでしまうことがあるんです。

この曲の前半では現状の不満を吐露していたジャスミンですが、中盤では自立するように強く背中を押される内容を、女中たちに言われています。

 

劇団四季版は「同情する」

 

今回見ていくのはこのパートです。

 

しきたりに縛られて
閉じ込められ
心の声さえも
抑えてる
どうすべきかしら?
胸に手を当て
何が望みがを 問いかけて

―劇団四季ミュージカル 『アラジン』 より 「壁の向こうへ」(訳詞:高橋知伽江)

 

劇団四季版では、同情から入って提案するという流れになっています。

 

  • 同情:しきたりに縛られて、閉じ込められているから、心まで解放できずにいるのね
  • 提案:でもね、ジャスミン。あなたの本当の望みは何かしら?胸に手を当ててごらんなさい?

 

では、英語版はどうでしょうか?

 

 

英語版は「同情しない」

ジャスミンの現状を伝える

 

英語版は同情などしていないんです(笑)。

ある意味、ストレートに「ジャスミン、今のあなたってこうよ」と言っている感じなんですね。

 

LADIES:
Told to show devotion every day
And not second guess it

JASMINE:
If a new emotion comes my way

LADIES:
You suppress it

―ブロードウェイミュージカル “Aladdin” より “These Palace Walls” (作詞:Chad Beguelin)

 

歌詞を見てみましょうか。

 

  • Told to show devotion every day … 深い愛情を示すよう毎日言われ
  • And not second guess it … そしてそれに対してああすれば良かったと、後知恵で批判することもせず

 

“to show devotion” をここでは「深い愛情を示す」とありますが、 “devotion” にはこのような意味があります。

 

  • devotion … 献身、深い愛情、信心

 

なので「献身的になるように毎日言われ」という意味と解釈しても良いでしょう。いずれにせよ「王女はこうであれ」と毎日言われているということです。

しかし、それに対して「何も意見していないじゃない、行動に移していないじゃない」と歌っているんです。

これは結構耳が痛いですね。そしてこう続きます。

 

  • If a new emotion comes my way … もし新しく強い感情が芽生えたら
  • You suppress it … あなたはそれを抑えている

 

これは読んだ通りですね。

“emotion” とは「強い感情」ですから、ここでは「こうしたい」というような気持ちを指していると言えます。

しかしながら「それすらも抑えてしまっているよね」と女中たちは歌っています。

 

自立するよう伝える

 

私がジャスミンだったら「私だって、そんなの分かっているわ!」と言ってしまいそうなところですが、ジャスミンはそんなことは言いません。

 

JASMINE:
What would be your suggestion

LADIES:
Stand on your own two feet
And ask why a certain question keeps repeating

―ブロードウェイミュージカル “Aladdin” より “These Palace Walls” (作詞:Chad Beguelin)

 

ここは劇団四季版も英語版もあまり変わらないのですが、次のようになっています。

 

  • What would be your suggestion … あなた達の提案は何かしら?

 

女中達に意見を求めているので、言い換えれば劇団四季版の「どうするべきかしら」と同じになります。

すると女中達は真っ向からこう歌います

 

  • Stand on your own two feet … あたた自身の2つの足で立ちなさい
  • And ask why a certain question keeps repeating … そして確かだと思う疑問を、自分に問い続けなさい

 

なんか…カッコいいな。こんな風に人に助言したいですし、助言されたい。

同情が必要な時もあるし、ストレートな意見が辛い時もあるけれど、適確に助言された方が問題が明確になって行動しやすくなりますよね。

“a certain question” を「確かだと思う疑問」と説明していますが「自分の信念」みたいなものを指しているのではないかなと思っています。

「これ、おかしいな?」と思ったことを見て見ぬふりするのではなくて、しっかり疑問を頂いて自分に問い続けなさい…と言っているのですね。

はぁ~、すごく良いなぁ、この展開。そして3人の女中の姉御肌感もなかなかですよね!

ジャスミンだけでなく、観客もはっとさせられるこの内容。私も言葉を胸に刻みたいなと思います。

 

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください