カジモドは誰の子?日本語訳されなかったジュアンの深い一言とは

劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より“The Bells of Notre Dame(ノートルダムの鐘)”を見てみると、死ぬ直前のジュアンとフロローのやりとりで、劇団四季版と英語版では意味が決定的に異なる箇所があります。

たった1つの言葉の有無で変わる、その決定的な違いとは一体なんでしょうか?

 

台詞の比較

ジュアンからの手紙を受けて、彼の元へと急いだフロロー。その時初めてフロリカとジュアンの間に赤ん坊がいたことを知ります。

その赤ん坊こそがカジモドですが、ジュアンに引き取ってくれるよう頼まれた時のフロローと、その後のジュアンの台詞に注目してみましょう。

 

劇団四季版

まず、劇団四季版はこうです。

 

フロロー:
ジプシーの子だ

ジュアン:
俺の子だ
引き取ってくれ 哀れに思ってくれるなら
―ミュージカル『ノートルダムの鐘』より「ノートルダムの鐘」

 

「ジプシーの子だ」と否定的なフロローに対して、「俺の子だ」と主張する流れになっているのが劇団四季版ですね。

 

英語版

一方の英語版はどうでしょうか?

 

Frollo:
But he’s a gypsy child!

Jehan:
…and mine.
Take him…if you can find anymore heart.
―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “The Bells of Notre Dame”

 

フロローの“But he’s a gypsy child!(でも、彼はジプシーの子だ)”に対して、ジュアンが“…and mine.(…そして、俺のだ)”と返します。

どうです?受ける印象が、何とな~く変わりませんか?

 

注目すべきは「接続詞」

もう一度比較してみましょう。

 

  • 劇団四季版:「ジプシーの子だ」→「俺の子だ」
  • 英語版:「でも、彼はジプシーの子だ」→「…そして、俺のだ」

 

英語版の方が、それぞれ1単語ずつ多いのに気付きましたか?そうです。ここの部分が違うんです!

 

  • 劇団四季版:「ジプシーの子だ」→「俺の子だ」
  • 英語版:「でも、彼はジプシーの子だ」→「…そして、俺のだ」

 

英語版にはそれぞれ、“but(でも、しかし)”と“and(そして、それから)”が入っています。

「なんだ、それくらい大した違いじゃないよね。」と思った方、本当にそうでしょうか?

 

大きく異なる意味

フロローの台詞

劇団四季版の「ジプシーの子だ」よりも、「でも」が入る英語版の方が、よりフロローのジプシーに対する嫌悪感が感じられますよね。

聖職者の立場として、一人の人間として、赤ん坊を見捨てるわけにはいかない…でも、それはジプシーの子ではないか…というフロローの感情がこのたった一言(but)からくみ取れるのです。

「状況は把握している、分かっている…でも…」というのが、ここで使われている“but”の意味するところです。

フロローがどれだけジプシーを軽蔑しているかが分かる一言になっています。

 

ジュアンの台詞

さて、私が声を大にして言いたいのは、このジュアンの台詞の違いです。

劇団四季版は「ジプシーの子だ」に対して「俺の子だ」と言っています。ジュアンはフロローがどれだけ自分を愛していたか知っている。だからこそ、フロローを説得するという意味で「俺の子だ」と訳されていることは否定しません。ですから、訳が間違っている訳でもありません。

ただ、これだと「兄さんの大事な弟の子なんだ」というニュアンスだけが前面に出てしまいます。英語版はそうではないんです!

“…and”があることの大きな意味!!

“…and”が入ることによる、この台詞の素晴らしさ!!!

フロローの「でも、ジプシーの子だ」を受けたジュアンの“…and mine(…そして、俺のだ)”に含まれたのはこういう感情でしょう。

 

「兄さんがジプシー嫌いなのは分かっている。でもこれは、俺の愛したジプシーの娘フロリカ、そして兄さんが愛する俺との間にできた赤ん坊なんだ」

 

ジュアンは“and”を使うことで、ジプシーのフロリカの子であり、自分の子でもあるというその両方の事実を伝えています。しかもそれを少し溜めてから、悲しそうに言う…そしてこの世を去っていきます。

愛する妻フロリカがジプシーであることを否定せず、愛する兄フロローを責めるでもないこの一言。

…素晴らしくはないですか?

私はこの台詞を見た時に、ジュアンの愛の深さを感じました。

歌詞内で音に限りがあるという訳でもない台詞部分で、この“…and”が翻訳されなかったのは、とても残念。悔やまれます。

たかが接続詞、されど接続詞。

観劇される方…是非、劇場でジュアンの想いを受け取って下さいね。

♪『ノートルダムの鐘』の曲一覧はこちらから:ノートルダムの鐘/英語歌詞を徹底分析!日本語で意味を理解しよう

⇒【ノートダムの鐘】オリジナルキャスト画像集はこちら☆・’

*良い記事だと思って下さった方、是非「いいね!」をお願い致します*
*facebookページへ参加して下さる方はこちらから→LOVE performing arts
*twitterをフォローして下さる方はこちらから→LOVE performing arts (@performingart2)



「なるほど!」と思ったらシェア♪

あわせて読みたい

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です