フロローの居場所はノートルダムだと分かる英語歌詞と素晴らしい翻訳

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より「ノートルダムの鐘(The Bells of Notre Dame)」の英語歌詞を見てみると、 “sanctuary” という単語への翻訳が光っています。

直訳すれば「聖域」となる “sanctuary” 。しかし、日本語では単に「聖域」とは訳しませんでした

どのように訳され、なぜこのような訳になったのかを考えていきましょう。

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“sanctuary” を「聖域」と訳さなかった歌詞を比較

英語

 

オープニングの中盤辺り、病に倒れたジェアンにフロローが会いに行った時のこと。

「もう一度ノートルダム大聖堂へ帰ろう」と歌うシーンがあります。英語ではこうですね。(引用の色付きは、あきかんによる。)

 

Brother dearest, come with me where we will find a remedy
And Notre Dame once more will be your sanctuary
Healing you will be my goal
Not just your body, but your soul
We’ll be together in our holy sanctuary

―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “The Bells of Notre Dame” (作詞:Stephen Schwartz)

 

歌われている内容はこうです。

 

  • 親愛なる弟よ、私と一緒に治療が出来る場所へと帰ろう
  • そしてノートルダムはもう一度おまえのsanctuaryとなる
  • お前を癒すことが私の目標だ
  • お前の体だけではなく、お前の魂も
  • 我らは我らの神聖なsanctuaryで共に暮らすのだ

 

この2つの “sanctuary” はいずれも「聖域」と訳して問題ない箇所のはず。しかし、日本語ではそうなってはいません

 

日本語

 

一方の日本語歌詞を見てみましょう。(引用の色付きは、あきかんによる。)

 

病を治せる薬が見つかるさ
ノートルダムに帰ろう
聖域
魂と体癒してやろう
2人で暮らすんだ
我が家

―劇団四季ミュージカル 『ノートルダムの鐘』 より 「ノートルダムの鐘」(訳詞:高橋知伽江)

 

英語の方が圧倒的に情報量が多い中で、かなり忠実に訳されていると分かります。

そしてここでワザが光るのが、 “sanctuary” を「聖域」と「我が家」と訳し分けていることです。

では何故、両方とも「聖域」と訳さなかったのでしょうか?

 

何故「聖域」と「我が家」と翻訳したのか

 

注目すべきポイントは「ノートルダムの鐘(The Bells of Notre Dame)」の初めの方にありました。

孤児となったフロローとジェアン兄弟が、ノートルダム大聖堂で生活することになったシーンです。

 

英語

 

英語から見てみましょう。この部分です。(引用の色付きは、あきかんによる。)

 

Oh dear brother
Meet these arches and this sacred dome
We are blessed to find our sanctuary and our home

―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “The Bells of Notre Dame” (作詞:Stephen Schwartz)

 

意味を押さえておきましょう。

 

  • あぁ、愛する弟よ
  • このアーチと神聖なドームに向かいなさい
  • 聖域そして我が家を見つけられた我らは恵まれている

 

孤児になってしまって行くあてのない兄弟が、彼らを守ってくれる場所(sanctuary=聖域)と居場所(our home=我が家)を同時に与えられ、フロローが心から感謝しているパートですね。

そして言う間でもなく、その両方の役割を果たす場所が「ノートルダム大聖堂」だということが分かります。

 

日本語

 

では、ここの日本語訳を見てみましょう。(引用の色付きは、あきかんによる。)

 

ここは神に守られた場所
そして私たちの我が家

―劇団四季ミュージカル 『ノートルダムの鐘』 より 「ノートルダムの鐘」(訳詞:高橋知伽江)

 

少しニュアンスが異なるとはいえ、伝えたい内容は同じです。

ノートルダム大聖堂が彼らにとってどんな役割を果たすかを、前面に出している訳になっていますね。

 

「sanctuary=聖域=我が家」となるワケ

 

ここまで読んでみて、勘の良い方は何かピンとくるものがあったはず。

そうです。

孤児になった彼らを迎え入れたノートルダム大聖堂は、彼らにとっての「聖域」であると同時に「我が家」にもなったのです。

つまり、こういう構図が成り立ちます。

 

  • ノートルダム大聖堂(Notre Dame) = 聖域(sanctuary) = 我が家(our home)

 

ここでもう一度冒頭で紹介した歌詞を思い出してみましょう。

 

  • And Notre Dame once more will be your sanctuary … そしてノートルダムはもう一度おまえのsanctuaryとなる
  • We’ll be together in our holy sanctuary … 我らは我らの神聖なsanctuaryで共に暮らすのだ

 

先にも説明した通り “sanctuary” とは「聖域」であり「我が家」なんです。

もちろん両方とも「聖域」と訳しても良いのですが、それでは意味が半減してしまいます。

ではどう翻訳したら良いか…?そこで、それぞれの行に二分しているというわけです。

 

  • And Notre Dame once more will be your sanctuary … ノートルダムに帰ろう 聖域
  • We’ll be together in our holy sanctuary … 2人で暮らすんだ 我が家

 

文章的にも自然ですし、状況に適した意味で訳されています

この訳であれば、孤児になってしまった時のシーン同様、観客は自然と「ノートルダム大聖堂(Notre Dame)=聖域(sanctuary)=我が家(our home)」という構図を把握できますよね。

 

いかがでしたか?

日本人にとってはあまり馴染みのない「聖域」という言葉を上手く補いながら、原文に忠実に訳されたパートだと思います。

ワザが光る翻訳はほかにも沢山あるはずです!みなさん、是非探してみてくださいね。

 

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!

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