70もの台詞を暗記していた?劇場猫ガスの現役役者時代を知る

劇団四季ミュージカル『キャッツ(CATS)』より“Gus:The Theatre Cat(ガス/劇場猫)”の英語歌詞を見てみると、日本語で歌われているよりもチャーミングで、優秀、そして勇敢なガスの役者時代を知ることができます。

ガスはかつて、どんな役者猫だったのでしょうか?今回はそこを詳しく見ていきましょう。

【ブロードウェイミュージカル“Cats”/“Gus:The Theatre Cat”/作詞:T.S. Eliot * 劇団四季ミュージカル『キャッツ』/「ガス – 劇場猫」/訳詞:浅利慶太】

 

暗記、ギャグ、そしてミスをしない優秀さ

 

劇団四季の歌詞で、次のように歌われている部分がありますよね。

 

あらゆる役を演じ分けて
七十の長台詞も並べながら

即興台詞で しゃれのめし
おおみえ 独白 お手の物

―劇団四季ミュージカル 『キャッツ』 より 「ガス – 劇場猫」(訳詞:浅利慶太)

 

ここは、英語歌詞では次のように歌われています。

 

I have played, in my time, every possible part
And I used to know seventy speeches by heart
I’d extemporize backchat
I knew how to gag
And I knew how to let the cat out of the bag

―ブロードウェイミュージカル “Cats” より “Gus:The Theatre Cat”(作詞:T.S. Eliot)

 

どんな役者だったか、1つずつ読み解いていきましょう。

「70もの台詞」と「即興台詞」というのは英語歌詞でも登場し、このように歌われています。長い台詞を70個も覚えたり、アドリブが利く役者だったんだと、ガスは自慢しているんですね。

 

・used to know seventy speeches by heart…70もの長台詞を暗記していた

extemporize backchat…会話の返事をアドリブした

 

しかし次の2つについては英語では歌われていない内容です。

 

・I knew how to gag…ギャグの言い方を知っていた

・And I knew how to let the cat out of the bag…そして秘密を漏らし方も知っていた

 

なんてチャーミングな!

このブロックからは、気転が利いてユーモア溢れる、優秀な役者猫だったことが分かりますね。

ちなみに“let the cat out of the bag”はイディオムで「バッグの中から猫が飛び出してしまう様子」から、「秘密を漏らす」という意味になったそうですよ。

 

彼の優秀ぶりはまだまだ続きます。

 

この背中 この長いしっぽ
そのしなやかな身のこなし

みんなは
うっとりとみとれてた
声の響きにしびれてた

―劇団四季ミュージカル 『キャッツ』 より 「ガス – 劇場猫」(訳詞:浅利慶太)

 

劇団四季の歌詞でこのように歌われている部分ですが、一部省かれている内容があります。それがここです。

 

I knew how to act with my back and my tail
With an hour of rehearsal
I never could fail
I’d a voice that would soften the hardest of hearts
Whether I took the lead or in character parts

―ブロードウェイミュージカル “Cats” より “Gus:The Theatre Cat”(作詞:T.S. Eliot)

 

内容はこうです。

 

・With an hour of rehearsal…1時間の稽古では

・never could fail…一度だって間違えなかった

 

なるほど、稽古での優秀さもガスの自慢の1つだったんですね。

 

ヤジが飛んだ!?

 

そんな優秀なガスの出演作。

さぞかし人気な猫だったんだろうなと思いますが、意外な出来事もあったようです。

劇団四季の歌詞を見る限りでは、みんなの人気者…といった感じがしますよね。

 

俺が出ると声がかかる
待ってました ガス 大統領

歴史に残る名演技
これぞ炎の野獣だぜ!

―劇団四季ミュージカル 『キャッツ』 より 「ガス – 劇場猫」(訳詞:浅利慶太)

 

しかし、英語歌詞を見てみると必ずしもそうだったわけではないと分かります。

 

And he likes to relate his success on the halls
Where the gallery once gave him seven catcalls
But his grandest creation as he loves to tell
Was Firefrorefiddle, the Fiend of the Fell

―ブロードウェイミュージカル “Cats” より “Gus:The Theatre Cat”(作詞:T.S. Eliot)

 

ここのパートではこんなことが歌われています。

 

・the gallery once gave him seven catcalls…観客は一度彼に7回もヤジを飛ばしたことがある

 

なんということでしょう!

ガスにヤジが飛んだなんて…しかも7回も!

いったい何があって野次を飛ばされたのかは分かりませんが、役者にはつきものかもしれませんね。

ちなみに、ミュージカル『キャッツ』の英語歌詞の中には、“let the cat out of the bag”や“catcall”のように、“cat”に掛けたイディオムや単語が所々で登場します。ぜひ、探してみてくださいね。

 

子どもを家事から助けた!

 

そんなガスには、勇敢な一面もありました。なんと、家事から子どもを助けたそうなんです。

 

I once crossed the stage on a telegraph wire
To rescue a child when a house was on fire

―ブロードウェイミュージカル “Cats” より “Gus:The Theatre Cat”(作詞:T.S. Eliot)

 

“house”とは「家」ではなく「劇場」のこと。日本語でも劇場のことを「小屋」と言うような感覚ですね。

電線を渡って舞台上を横切って子どもを助けたそうで、初めは作品の中での出来事を歌っていたと思ったのですが、どうやらそうではなさそうなんです。

既にお読みいただいた方もいらっしゃるかもしれませんが、実はガス、実在した2人のイギリス人俳優と共演したことがあるんです。

 

その2人とはアーヴィングとトリーで、いずれも劇場を運営する人物でもあったのですが、アーヴィングの運営していた「ライシアム劇場」では火災が発生しているので、その時のことを歌っていると考えられます。

ちなみに、日本語でも英語でもシェイクスピアについて触れられていますが、シェイクスピア作品がよく上演されたのも、ライシアム劇場だったそうですよ。

 

ガスは劇場猫と言われるにふさわしい、劇場と共に生きた猫だとが改めて分かりますね。

 

 

若い役者への愚痴

 

さて、日本語でも歌われている若い役者への愚痴、英語ではどうなっているのでしょうか?

 

近頃の役者 不まじめだ
芸もなければ技もない

ろくに稽古もやらないで
スター気取りは許せない

―劇団四季ミュージカル 『キャッツ』 より 「ガス – 劇場猫」(訳詞:浅利慶太)

 

色のついているところが日本語では歌われていない部分です。

 

And I say now these kittens
They do not get trained
As we did in the days when Victoria reigned
They never get drilled in a regular troupe
And they think they are smart
Just to jump through a hoop

―ブロードウェイミュージカル “Cats” より “Gus:The Theatre Cat”(作詞:T.S. Eliot)

 

内容を見てみましょう。

 

・As we did in the days when Victoria reigned…ヴィクトリア女王時代に我々が(稽古を)していた時ほどには(稽古を)していない

・And they think they are smart just to jump through a hoop…輪をくぐり抜けるだけで賢いと思っている

 

「最近の若者は自分の時代ほどには稽古もしておらず、輪をくぐり抜ける程度で満足しているようだ」と言っているんですね。いわゆる「最近の若い者は…」というアレですね(笑)。

演技力にも厳しいガスの一面が見て取れます。

 

グロールタイガーをもう一度

 

最後に触れているのが、ガスの十八番、グロールタイガーです。劇団四季の歌詞ではこのように歌われていますよね。

 

喝采浴びた あたり役
この世の名残にみせようか

みんな見たがる大芝居
血がこおるようなトラ男

やろうか グロールタイガー
おのぞみならば

みせようか みせようか
みせようか

―劇団四季ミュージカル 『キャッツ』 より 「ガス – 劇場猫」(訳詞:浅利慶太)

 

しかし、英語歌詞では少しニュアンスが異なっています。

 

I once crossed the stage on a telegraph wire
To rescue a child when a house was on fire
And I think that I still can much better than most
Produce blood-curdling noises to bring on the ghost
And I once played Growltiger
Could do it again
Could do it again
Could do it again . . .

―ブロードウェイミュージカル “Cats” より “Gus:The Theatre Cat”(作詞:T.S. Eliot)

 

少し難しい単語が並んでいますが、歌われているのは次のようなことです。

 

・much better than most…絶頂期よりも良い

・Produce blood-curdling noises…血も凍るような声を出す

・bring on the ghost…幽霊をも引きだす

 

若かりし頃の思い出を色々と語ってきたガスですが、「今でもなお、血も凍り幽霊をも呼び出すような声を出すことができる。しかも絶頂期の頃よりも良い声を出せると思うんだ…」と最後に歌っているんですね。

そしてこう続きます。

 

・And I once played Growltiger…わしはかつて、グロールタイガーを演じていた

・Could do it again…もう一度できたなら

 

日本語と英語で決定的に違うのはここです。

日本語では「おのぞみならば、見せようか」と、どちらかというと強気な内容になっています。

しかし、英語では違うのです。

“Could do it again”というのは、「(グロールタイガーを演じることが)できたなら」という意味で、昔を懐かしんでいます。

ここまでずっと自分の過去を自慢していた年老いた役者猫が、遠い昔を懐かしみながら繰り返すこのシーンは、どこか寂しさを覚えます

 

いかがでしたか?

大筋はほとんど変わらないこの歌詞ですが、読み込んでいくと、ガスの演劇へのより深い愛情と役者としてのあり方を読み解くことができます

英語歌詞を知って、ガスの愛の深さに触れてくださいね。

 

グロールタイガーの解説記事はこちらをご覧くださいね。

 

その他、ミュージカル『キャッツ』についてはこちらの記事をご覧ください。



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