Tango: Maureen④マークによるモーリーンの解説

東宝ミュージカル『レント(RENT)』より “Tango:Maureen” の英語歌詞を見てみると、マークがモーリーンの性格を「モーリーンのタンゴ」だと説明しています。
「モーリーンのタンゴ」とはどのようなものなのでしょうか?
※この曲がなぜ「タンゴ」なのかという点を考察してみました!こちらの記事を先に読んでいただくと、より理解が深まりますよ。
・曲名:Tango: Maureen
・訳詞:Jonathan Larson
Contents:
歌詞のおさらい
大好きです、この曲!
タンゴのリズムに刻まれながら、頭のキレる両者が素晴らしい論理展開を繰り広げていきますね。過去の恋人であろうが、今の恋人であろうが、結局モーリーンに振り回されている2人が、なんだかんだいって協力しているのが本当に面白いナンバーです。
マークは元恋人であることからモーリーンのことをよく分かっているのに対して、現恋人のジョアンはまだまだモーリーンを理解しきれていない。それが恋敵であるはずのマークによって少しずつ理解を深めざるを得ないところが笑えます。そんなところに注目しながら見ていきましょう。
今回は、マークが「モーリーンのタンゴ」について説明する場面ですよ。
MARK:
The Tango Maureen
It’s a dark, dizzy merry-go-round
As she keeps you danglingJOANNE:
You’re wrongMARK:
Your heart she is manglingJOANNE:
It’s different with meMARK:
And you toss and you turn
‘Cause her cold eyes can burn
Yet you yearn and you churn and reboundJOANNE:
I think I know what you meanBOTH:
The Tango Maureen
―ブロードウェイミュージカル “RENT” より “Tango:Maureen” (作詞:Jonathan Larson)
「モーリーンのタンゴ」とは何か
“The Tango Maureen” 以降でモーリーンの性格が説明されています。まずは、マークのパートだけ見ていきましょう。
- It’s a dark, dizzy merry-go-round…それは暗くて、目の回るメリーゴーランドのよう
- As she keeps you dangling…彼女が君を宙ぶらりんにするほど
- Your heart she is mangling…君の心はズタズタになる
- And you toss and you turn…そして君は動揺してあれこれ考える
- ‘Cause her cold eyes can burn…なぜなら、彼女の冷たい目が燃え上がるかもしれないから
- Yet you yearn and you churn and rebound…それでも君は心惹かれ、むかついて、立ち直る
あー、なんだかとっても腑に落ちる歌詞ですねー(笑)。それに対して、ジョアンはそれぞれこのように返しています。
- You’re wrong…あなたは間違っているわ
- It’s different with me…私は別よ
- I think I know what you mean…どういう意味か分かった気がする
否定を続けていたジョアンも、マークの話が進めば進むほど身に覚えがある気がして、最終的には納得せざるを得なくなってしまうんですね。お気の毒に…。
隠語に注目
「モーリーンのタンゴ」、理解に苦しむこともなくマークの説明に納得された方も多いはず。私も「上手いこと言うな~」と感心しました。しかし、お気づきになったかどうか、ここには隠語が隠されています。
別の記事でも説明していますが、この曲が「タンゴ」で必要性があり、その理由がもの凄く深いのです!詳細は文末の記事をお読みいただきたいのですが、「タンゴ」には「セックスする」という意味があることから、そういったニュアンスがベースにある曲なんですね。
で、この歌詞内にある隠語はというと… “dangling” です。
- dangling…ぶら下がる、ぶらぶら揺れる、宙ぶらりん]
この歌詞内では「宙ぶらりん」という意味が的確ですが、「ぶら下がる、ぶらぶら揺れる」と聞いて何か連想できませんか?
そう、男性器です(苦笑)。
マークがマイクスタンドを意味ありげに動かす感じから「もしかして?」とは思いましたが、やはりこの隠語がありました。
ではこの歌詞自体に裏の意味があるかどうかというと、そういうことではなさそうです。ただ、この場面であえて “dangling” という単語を使っている点から考えると、2重の意味を持たせて言葉遊びをしたり含みを持たせているんですね。こういうちょっとした単語のニュアンスが、曲を劇的に深めます。
ちなみに隠語ではありませんが、 “toss(動揺する)” と “turn(あれこれ考える)” はタンゴの動作に合う単語をあえて用いているんでしょう。 “toss” は「ぐいっと上げる」、 “turn” は「回る」という意味がありますからね。こういった2つ以上の意味を持つ単語を歌詞に当てはめて、上手く世界観を作っていく感じ…本当に素晴らしいテクニックです!
