グロールタイガーの最期と、シャム猫軍の正確な動き

劇団四季ミュージカル『キャッツ(CATS)』より“Growltiger’s Last Stand(グロールタイガー/海賊猫の最期)”の英語歌詞を見てみると、シャム猫軍の行動が非常によく分かります。

劇団四季版では描かれていないその様子を、しっかりと把握しておきましょう。

グロールタイガーの油断

荒々しく、誰もが震え上がる印象のグロールタイガーですが、そんな彼にも人並みな面がありました。

 

In the forepeak of the vessel Growltiger sat alone
Concentrating his attention on the lady Griddlebone
And his raffish crew were sleeping in their barrels and their bunks
As the Siamese came creeping in their sampans and their junks
―ミュージカル “CATS” より “Growltiger’s Last Stand”

 

2行目の“Concentrating his attention on the lady Griddlebone”というのは「彼の神経を女性、グリドルボーンに集中させていました」という意味です(笑)。劇団四季版では「グロールタイガーすっかり/グリドルボーンにしびれ」とありますが、英語版の方がグリドルボーンの1点に集中していた様子が伝わってきますね。この集中が最終的にあだとなる訳ですが…。

彼がグリドルボーンを見つめていたのは“In the forepeak of the vessel”、つまり船の船首倉。船首倉というのは船の中でも貨物を積んでいるところですが、猫が忍び込みそうな場所ですよね。グロールタイガーはそこにたった1匹で座っていた(Growltiger sat alone )のです。

彼の下品な仲間(raffish crew)はその時どうしていたかというと、船の胴体や寝台で就寝。劇団四季版では「荒くれ部下共姿をかくし」とありますが、姿を隠していたのではなく寝ていたんですね!

グロールタイガーも彼の仲間も完全に油断していたことがお分かりいただけたでしょう。実はこの時、シャム猫軍がサンパンとジャンクで忍び寄ってきていたんですね…。

サンパンとジャンクとはそれぞれ船の種類です。

 

  • sampan(サンパン)…中国・東南アジアの河川や沿岸で使う小型木造の平底船
  • junk(ジャンク)…シナ海付近の平底帆船

 

シャム猫の原産国はタイですから、彼らが乗ってきた船の種類もアジアのものということで、歌詞内で使われている単語にこだわりを感じます。また、グロールタイガーが油断していたことに加え、彼の仲間やシャム猫軍が何に乗って迫ってきたのかが英語版からはよく分かりますね。

 

グリドルボーンとの接近

シャム猫軍が近づいているとはつゆ知らず、グロールタイガーはグリドルボーンに接近します。

 

Growltiger had no eye or ear for aught but Griddlebone
And the lady seemed enraptured by his manly baritone
Disposed to relaxation and awaiting no surprise
But the moonlight shone reflected from a thousand bright blue eyes
―ミュージカル “CATS” より “Growltiger’s Last Stand”

 

“Growltiger had no eye or ear for aught”では「グロールタイガーは何に対しても目や耳が肥えていなかった」というニュアンスのことが書かれています。直後“but Griddlebone”と書かれているので、しかしグリドルボーンは違った…つまり目も耳も超えているということを言っているのでしょう。

グリドルボーンはグロールタイガーの男らしいバリトン(manly baritone)にうっとり(enratured)し、リラックスした状態になった、つまり心が開放的にな状態になったようです。

しかし、そんなロマンチックな状況のさなか、シャム猫軍は一歩また一歩と近づいてきます。劇団四季版の「月の光にギラギラ青い目」が英語版でどのように表現されているかというと、「月明りは1,000の青く輝く目玉に反射して光っていた(But the moonlight shone reflected from a thousand bright blue eyes)」となっています。月明りを受けて忍び寄るシャム猫軍の目が光っているということと、“thousand(1,000)”という表現から猫は500匹いるということも分かりますね。

間接的な表現が、より不気味さとスリルを感じさせますね。

 

 

シャム猫軍の動き

さて、サンパンとジャンクでグロールタイガーの乗る船に忍び寄り、月明りを受け目をギラギラさせているシャム猫軍はその後どのような行動をとったのでしょうか?ここは劇団四季版では描かれていない部分なので、しっかり確認していきましょう。

 

And closer still and closer the sampans circled round
And yet from all the enemy there was not heard a sound
The foe was armed with toasting forks and cruel carving knives
And the lovers sang their last duet in danger of their lives
―ミュージカル “CATS” より “Growltiger’s Last Stand”

 

まず、1行目の“closer and closer”というのは「徐々に近づいてくる」、“circled around”は「ぐるっと囲う」という意味です。サンパンに乗ってやってきたシャム猫軍はじわじわと近づき、グロールタイガーの船をぐるっと囲ったことが分かります。

そして2行目の“there was not heard a sound”は「物音一つしなかった」ですから、シャム猫軍は気配すら感じさせなかった様子が伺えますね。

そんな彼らが武器として持っていたものは“toasting forks”と“carving knives”。

 

  • toasting forks…(火にあぶってパンをトーストするための)長柄のフォーク
  • carving knives…肉切り用大型包丁

 

前者は可愛らしいですが、後者は恐ろしいですね!“carving knives”の前には“cruel(残酷な)”と書いてあるくらいですから、見るに恐ろしい様だと分かります。

こんな状況にも関わらず、そうとは知らないグロールタイガーとグリドルボーンは絶体絶命の状況下で人生最後のデュエットを歌っていたのですね…。

そしてとうとうその時は訪れます。

 

Then Gilbert gave the signal to his fierce Mongolian horde
With a frightful burst of fireworks, the Chinks they swarmed aboard
―ミュージカル “CATS” より “Growltiger’s Last Stand”

 

ギルバートが彼の仲間である凶暴なモンゴルの大群(fierce Mongolian horde)に合図を送るのです。やはりここもアジア系の国です。

ギルバートがどのように合図を送ったかというと、“with a frightful burst of fireworks(ぞっとするような怒りの爆発と共に)”ですから、グロールタイガーへの怒りをずっと抑えてきたことが分かりますね。そして、中国の猫(Chinks:中国人)が船に乗り込んで行きます。

ここまで読んで分かることは、実際はシャム猫(タイ)だけでなく、モンゴルや中国の猫も参戦しているということです。グロールタイガーを討つために、3ヵ国力を合わせているということでしょう。

 

 

その時、グリドルボーンは…

さて、アジア勢の猫が船に押し掛けた時、デュエットを歌っていたグリドルボーンはどうしたか…。ここは劇団四季版でもご存知の通りです。

 

Then Griddlebone she gave a screech, for she was badly skeered
I am sorry to admit it
But she quickly disappeared
She probably escaped with ease
I’m sure she was not drowned
But a serried ring of flashing steel Growltiger did surround
―ミュージカル “CATS” より “Growltiger’s Last Stand”

 

グリドルボーンの行動を整理してみましょう。

 

  • she gave a screech…彼女は鋭い叫び声をあげた
  • she was badly skeered…ひどく恐れおののいた
  • But she quickly disappeared…しかしすぐさま姿を消した
  • She probably escaped with ease…彼女はおそらく簡単に逃げることができたのだろう
  • I’m sure she was not drowned…彼女が溺れなかったのは間違いない

 

グリドルボーンの行動を歌う途中に“I am sorry to admit it”があります。これは「認めたくはないが」というニュアンスです。つまり、「認めたくはないが、彼女はすぐさま姿を消してしまったのです」と言っているんですね。あれだけ熱く愛のデュエットを歌っていたにも関わらず、薄情だ…と言わんばかりのフレーズですね。

そしてスルリと逃げ切ったグリドルボーンの一方で、グロールタイガーはというと刀が密集した円の中にぐるりと囲まれてしまった…という訳です。

 

グロールタイガーの最期

そしてグロールタイガーはどうなったのか。

 

The ruthless foe pressed forward in stubborn rank on rank
Growltiger to his vast surprise was forced to walk the plank
He who a hundred victims had driven to that drop
At the end of all his crimes was forced to go kerflip kerflop
―ミュージカル “CATS” より “Growltiger’s Last Stand”

 

冷徹な敵軍(ruthless foe)は強情にも一歩また一歩と歩みを進め、グロールタイガーは舳先まで追い詰められてしまいました。そしてその結果、落ちてしまったんですね…あぁ…グロールタイガー!

最後の1行“At the end of all his crimes was forced to go kerflip kerflop”は意味がピンとこなかったのですが、“kerflip kerflop”は“flip flop”を強調した言い方のようです。“flip flop”は「旗などがパタパタ鳴る音」や「意見などが急変する」という意味なので、「最終的には彼の全ての罪は罪ではなくなった」という意味なのかなと考えています。

劇団四季版では「旗をふって記念日つくられた」となっていますから、罪を犯したグロールタイガーを倒し、それは罪のないもの、つまり記念日となった…という解釈なのかもしれません。

いかがでしたか?シャム猫軍の様子がより分かると臨場感も変わってきますよね!劇場で鑑賞する際は、是非シャム猫軍の動きにも注目してみてください。

 

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