バストファージョーンズは、実は政治好きな猫ではなかった!

劇団四季ミュージカル『キャッツ(CATS)』より「バストファージョーンズ – 大人物?(Bustopher Jones)」の歌詞を見てみると、彼は「政治好きの金持ち」だと歌われています。

しかし…英語歌詞では政治について全く触れていないんです!

日本語で政治について歌うパートは、自分の経営するクラブについて歌われています。今回はそこを詳しく見ていきましょう。

Music from the Musical

・作品名:キャッツ(CATS)

・曲名:バストファージョーンズ ‐ 大人物?Bustopher Jones

・楽譜:Bustopher Jones

・訳詞:浅利慶太(作詞:Trevor Nunn & Richard Stilgoe)

アルバムを視聴/楽譜 ・アルバム(日本語):キャッツ
・アルバム(英語):CATS
・楽譜:

 

※2020.2.25 追記:

この記事について、読者様より英語で有力な情報が入りました!どうやら “has eight or nine clubs” とは、バストファージョーンズが「8~9のクラブを経営する」のではなく、「8~9のクラブに所属している」という意味のようです。追って記事を変更させて頂きます。貴重な情報を有難うございました。

 

歌詞の比較

日本語

 

劇団四季の歌詞では次のフレーズからも分かる通り、バストファージョーンズが「政治好きの猫」であると歌われています。

 

街一番の金持ちで
政治が大好き

―劇団四季ミュージカル 『キャッツ』 より 「バストファージョーンズ – 大人物?」(訳詞:浅利慶太)

 

そしてここでは「政府との関わり」や「社会に対する自身の考え」などが述べられていますね。

 

わしは今回 頼まれたんだ
政府の委員をね

内需拡大 これこそが
今日の大課題

それを終えると
急いでごちそうを食べに行く

うかない顔の時は
まずいものを食わされた後

―劇団四季ミュージカル 『キャッツ』 より 「バストファージョーンズ – 大人物?」(訳詞:浅利慶太)

 

しかし、このいずれも英語歌詞にはない内容なんです!

英語ではバストファージョーンズはクラブを経営する猫だと歌われていて、それ故に大人物であると歌われています。

 

日本ではあまりクラブに馴染みがなく、お金持ちで、政府の委員も頼まれる、政治好きのご意見番とした方が「大人物」というイメージがつきやすいので、日本語では「政治好きの猫」と変えたんでしょうね。

 

英語

 

では、②に当たる英語歌詞がどのようになっているかというと、日本語の倍の長さがあり次のようになっています。

 

My visits are occasional to the Senior Educational
And it is against the rules
For any one cat to belong both to that
And the Joint Superior Schools
For a similar reason when game is in season
I’m found not at Fox’s but Blimp’s
I am frequently seen at the gay Stage and Screen
Which is famous for winkles and shrimps

In the season of venison I give my ben’son
To the Pothunter’s succulent bones
And just before noon’s not a moment too soon
To drop in for a drink at the Drones
When I’m seen in a hurry there’s probably curry
At the Siamese or at the Glutton
If I look full of gloom then I’ve lunched at the Tomb
On cabbage, rice pudding and mutton

―ブロードウェイミュージカル “Cats” より “Bustopher Jones” (作詞:T.S. Eliot)

 

長くて難しい単語が散りばめられたパートですが、ここでは全てバストファージョーンズ自身が経営するクラブについて歌っているんですよ!

1つずつ整理して説明していきますね。

 

 

バストファージョーンズが経営する「クラブ」とは?

クラブは全部で10店舗!

 

この長い歌詞をパッと見ただけでは、どれがクラブなのか分かりませんよね。

しかし、見分け方があります。それは大文字に着目するということです!

英語では名前(人、店、会社など)の先頭は大文字になりますから、文中にある大文字から始まる単語を拾っていけば、どれがお店なのかが分かります。そうやって見ていくと、店名だろうと思われる単語は次の10店舗あることが分かりますね。

 

・Senior Educational

・Joint Superior Schools

・Fox

・Blimp

・Stage and Screen

・Pothunter

・Drones

・Siamese

・Glutton

・Tomb

 

では、それぞれどういう店名なのでしょうか?

 

それぞれのクラブの店名は?

 

それぞれの店名の意味はこのようになっています。

 

Senior Educational…上級教育(直訳)

Joint Superior Schools…共同上級学校(直訳)

Fox…キツネ

Blimp…飛行船

Stage and Screen…芸能界

Pothunter…賞金稼ぎの狩猟家

Drones…ブーン(蜂の飛ぶ音)

Siamese…シャム(タイ王国の旧名)

Glutton…大食家

Tomb…墓場

 

ネーミングセンスがあるかどうかというと…ないですね(笑)。何でそんな名前にしたんだろうというものばかりです。

 

店名に隠された裏の意味

 

しかしよくよく調べてみると、中には裏の意味を持ち合わせたものもあります。

 

Fox…狡猾な人、ずる賢い人

Blimp…おデブ

Drones…のらくら者、居候

Glutton…熱心家、凝り屋

 

ここを押さえておくと、歌詞全体の皮肉を理解出来るので、頭の片隅に入れておいてくださいね!

 

 

バストファージョーンズは、いつ、どの店にいるのか?クラブの規則は?

 

日本語では社会に対する意見を述べていたバストファージョーンズですが、英語ではクラブの規則どんな時にどのクラブにいるか歌っています。

 

クラブ「上級教育」とクラブ「共同上級学校」の規則

 

最初に登場するクラブはこの2店舗ですが、これらのメンバーズクラブに所属するためには明確な規則があります。

“it is against the rules(~することは規則違反である)” とあり、どうやらクラブ「Senior Educational(上級教育)」とクラブ「Joint Superior Schools(共同上級学校)」に同時所属することは規則違反のようです。

いずれも教育に関連する名前のクラブだからでしょうか?それぞれのクラブの方針が違うのかもしれない…なんて想像してしまいますね。恐らくこれらのクラブ会員になっているのは教育関係の人達(猫達?)でしょう。

また、 “My visits are occasional” と書かれている通り、この2つのクラブにバストファージョーンズが顔を出すのは特別な時だけのようです。「何かご意見を頂戴したい」と会員に言われた時だけ顔を出すのかもしれませんね。

 

狩りのシーズンにはクラブ「キツネ」ではなく「飛行船」にいる?

 

次に登場するクラブはこの2店舗。

“when game is in season” というのは「狩りのシーズンには」という意味ですから、狩りのシーズンにはクラブ「Fox(キツネ)」ではなく、クラブ「Blimp(飛行船)」にいるよと歌っていることが分かります。

しかし、先にも説明した通り “Fox” と “Blimp” には裏の意味がありました。

 

Fox…狡猾な人、ずる賢い人

Blimp…おデブ

 

表向きには可愛い名前の「キツネ」と「飛行船」ですが、裏の意味で解釈すると「狩りのシーズンだと、私はずる賢い状態ではなく、おデブな状態で見つかるだろうよ」とも読み取れます。これは一体どういうことなのでしょうか?

ここで言う狩りとは、キツネ狩りのことではないかと思います。

 

伝統的にアカギツネを標的とし、猟犬として訓練されたイングリッシュ・フォックスハウンドや馬に用いて集団でキツネを追跡し、殺すスポーツハンティングである。(中略)キツネ狩りのシーズンは11月の第1月曜日からと決まっていた。

キツネ狩り(wikipedia)

 

そしてこのキツネ狩りは、バストファージョーンズのようなジェントルマン(紳士)にとって娯楽の1つだったようですね。

 

キツネ狩りは娯楽であると同時に有益な軍事訓練であると見なされていた。軍務に就いている者はキツネ狩りのシーズンに休暇を与えられた。また、ジェントルマンにとっては数少ない運動とスリルが味わえる場であり、舞踏会や食事会などの余興を伴った社交の場でもあった。故に、本格的なキツネ狩りは非常に金のかかる娯楽だった。

キツネ狩り(wikipedia)

 

つまりこの歌詞では「キツネ狩りのシーズンには、ずる賢いこと(キツネ狩り)はしないけど、食事会を楽しんで太っちゃうんだよね」というニュアンスが込められているのだと思います。

 

よく行くのはクラブ「芸能界」

 

4つ目はクラブ「Stage and Screen(芸能界)」。 “I am frequently seen at” とあるので、バストファージョーンズをよく見かけるのはクラブ「芸能界」だということです。

このクラブで有名な料理は “winkles(ヨーロッパタマキビガイ)” と “shrimps(エビ)” だそうですが、実はこの2つの単語にも裏の意味があります。

 

・winkle…(情報・人などを)やっと引き出す

・shrimp…取るに足らない者

 

ほー…なるほど。何だか、芸能人の情報を引き出す週刊誌の記者を想像してしまいそうですね。

きっとバストファージョーンズは、クラブ「芸能界」で有名なのは “winkles(やっと情報を引き出すような者)” とか “shrimps(取るに足らない者)” だと言いたいんでしょう。

だったら何で頻繁に顔を出すんでしょうね(笑)。

 

 

鹿肉のシーズンにはクラブ「狩猟家」に

 

鹿肉のシーズンには、クラブ「狩猟家」に行き、ジューシーな骨に賛辞を送る…というのがこの歌詞の内容のようですが、実はここにも皮肉が1つ。

そもそも肉ではなく骨に対して賛辞を送るということ自体が皮肉な訳ですが、注目すべきは狩猟家を意味する “Pothunter” です。

これは私達が想像する仕事としての狩猟家ではなく、賞金稼ぎのためだったり手当たり次第に撃つ狩猟家のことを指しています。

なので、バストファージョーンズは賞金稼ぎのために狩りをすることを非難しているのかもしれませんね。先のキツネ狩りのパートでも「キツネ狩りはしない」と解釈できる部分がありましたもんね。

 

お昼前にはクラブ「ブーン」へ

 

“And just before noon’s not a moment too soon to drop in for a drink” は「お昼ちょっと前というのは、お酒を飲むのにふらりと立ち寄る時間として、ちっとも早くない」という意味になります。

7つ目のクラブは “Drones” 、読み方は「ドローン」で、まさにあの空飛ぶ機械と同じです。 “Drone” とは蜂の飛ぶ音なので、日本語では「ブーン」とか「ブンブン」になるでしょう。

ですから、お昼ちょっと前にクラブ「ブーン」に立ち寄るにはちっとも早すぎない…という意味が表向きなのですが、実はここにも裏の意味が。

 

Drones…のらくら者、居候

 

ですから、ここでは「お昼前にクラブに立ち寄ることは、怠け者が一杯やるのにちっとも早すぎない」という皮肉が込められてると言えるでしょう。

 

カレーを食べにクラブ「シャム」か「大食家」へ

 

カレーと言ったらインドをイメージしますが、タイでも有名ですよね。

シャムはタイ王国の旧名ですから、クラブ「シャム」でも、クラブ「大食家」でもカレーがお腹いっぱい食べられそう(笑)。

“When I’m seen in a hurry” は「もし私が急いでいるところを見かけたら」という意味なので、ここはバストファージョーンズが急いでいるところを見かけたら、クラブ「シャム」かクラブ「大食家」にカレーがあるということだという意味です。

“glutton” には「熱心家・凝り屋」という意味もあるので、もしかしたらバストファージョーンズはカレーに凝っているのかもしれませんね。

 

浮かない顔の時はクラブ「墓場」

 

冒頭で紹介した劇団四季の歌詞に、こういうフレーズがありました。

 

うかない顔の時は
まずいものを食わされた後

―劇団四季ミュージカル 『キャッツ』 より 「バストファージョーンズ – 大人物?」(訳詞:浅利慶太)

 

この部分だけは英語歌詞にもある内容で、 “If I look full of gloom” が「もし私がうかない顔をしていたら」に当たります。

うかない顔をしていた時は何をした時かというとクラブ「墓場」でキャベツ、ライスプディング、そして羊肉のランチをしてきたからだとあります。

これって、まずいのはランチ内容ではなくて店名が大きく影響している気もしますけどね(苦笑)。

 

いかがでしたか?バストファージョーンズが経営するクラブの様子がイメージできたでしょうか?

日本語では政治好きなご意見番ですが、実は自分のクラブとそこに通う人(猫?)を皮肉っている奥深い歌詞だったんですね。

あなたならどこのクラブの会員になりたいですか?

 

バストファージョーンズのクラブがどこにあるかも英語歌詞で歌われているので、こちらの記事も併せてご覧くださいね。

 

 

バストファージョーンズが「街一番の金持ち」と言われる理由

 

さて、劇団四季の歌詞で「政治が大好き」と歌われているフレーズ①では「街一番の金持ち」であるとも歌われています。

 

街一番の金持ち
政治が大好き

―劇団四季ミュージカル 『キャッツ』 より 「バストファージョーンズ – 大人物?」(訳詞:浅利慶太)

 

それに対する英語の歌詞は次の通りですが、明確に「金持ち」だとは歌われていません。

 

In the whole of St. James’s the smartest of names
Is the name of this Brummel of cats

―ブロードウェイミュージカル “Cats” より “Bustopher Jones” (作詞:T.S. Eliot)

 

クラブを10店舗も経営すれば金持ちな大人物であることは明白ですが、次の記事では、なぜこの英語歌詞から「金持ち」という表現になったかを、更に深掘りして解説します。

 

バストファージョーンズ – 大人物?(Bustopher Jones)」の、他の記事はこちらから。


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2件のフィードバック

  1. Clement より:

    When it is said in the lyrics that Bustopher Jones “has eight or nine clubs,” it means that he “belongs” to eight or nine clubs, rather than “owning” and running them. The lines “And it is against the rules / For any one cat to belong both to that” refer to the fact that it is considered unacceptable to belong to more than one social club in the British society at that time. The song pokes fun at dandyism.

    • あきかん より:

      Hello, Clement. Thank you so much for your information. I never imagined that “has” meant “belongs”, not “owning”. Now it makes sense when the lyric goes “And it is against the rules / For any one cat to belong both to that” .
      I learned a lot from you, as I’m not an expert about British society. Thank you again for leaving your comment here.

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