ミュージカル『キャッツ』好きなら、絶対に読んでおきたい絵本

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

劇団四季ミュージカル『キャッツ(CATS)』。その原作がThomas Stearns Eliot(T.S.エリオット)の “The Old Possum’s Book of Practical Cats(キャッツ ポッサムおじさんの猫とつき合う法)” だということは、皆さまご存知のことでしょう。

そして皆さんがご存知なのは、文庫本の、挿絵がところどころに描かれた、キャッツシアターの売店でも売っているあの本です。

しかし、それとは別に『袋鼠(ポサム)親爺の手練猫名簿』という絵本があるのをご存知でしたか?

この本を読んでみると「そうそう、これこれ!」と言わざるを得ない、見事な翻訳の数々を見ることができます

是非読んでいただきたいこの1冊をご紹介します。

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この本との出会い

 

この絵本と出会ったのは、ほんの偶然でした。

いわゆる文庫本「ポッサムおじさんの~」を借りに図書館へ行ったところ、目に入ったのがこの絵本だったのです。題名はまるで違うものの、T.S.エリオットだし、「ポサム」とか「猫」とか、多分同じ作品だよな…と。それで借りてみたんですよね。

最初の率直な感想は「なにこれ…??」。

正直、苦手なタイプの訳だったので、その時はざっとしか読みませんでした。何というか、原文に忠実になりたいのは分かるけれど、内容がまるで入ってこなかったんですよね。それですぐに返却しました。

そもそも、この漢字だらけのタイトルが嫌だでした(苦笑)。何と読むか分からないし、ふりがなを追って「ポサムおやじのてれんねこめいぼ」と読めたところで、全然ピンと来ない(涙)!

しかし、それから2年程経って、もう一度読んでみることにしたんですよね。そうすると…「あ、この訳すごいかも」と素直に思えるようになったんです。

恐らく『キャッツ(CATS)』に関する数々の記事を書いていく中で発見した情報と、この絵本との訳がリンクしたことで、やっとこの絵本のすごさを体得できたのだと思います。

 

何が凄いか

翻訳も韻を踏んでいる

 

一度は読むのも嫌だったこの本の、何をすごいと感じたのか。それは「驚くほど原作に忠実であること」です。

“The Old Possum’s Book of Practical Cats” は全てが詩で構成されている本ですが、英語の詩は「韻(いん)」を踏んでいます。(この詩に限らず、英語の詩というのは基本的に韻を踏んでいます。)

そこを忠実に再現するため、日本語訳でも「韻」を踏んだ訳し方にしています。こういったところから、言葉遊びやリズム感を感じ取って頂けるというのが素晴らしい点の1つです。

 

猫の名前の訳し方

 

次にすごいのは、猫の名前までも訳してしまっているということです。

例えば “The Old Possum’s Book of Practical Cats(キャッツ ポッサムおじさんの猫とつき合う法)” ではそれぞれの猫の名前は次のように訳されています。

 

  • Rum Tum Tugger … ラム・タム・タガー
  • Mr.Mistoffelees … ミストフェリーズ
  • Bustopher Jones … バストファージョーンズ

 

しかし、この絵本では違います。

 

  • Rum Tum Tugger…ヘンテコヘントラ
  • Mr.Mistoffelees…カスミトフェレス氏
  • Bustopher Jones…ドアデブタン・ジョウンズ

 

…で、恐らく私同様、愛着のある聞き慣れた名前が好きな方は言うはずです。

「何だ、この訳は!名前まで変える必要がどこにある!?これではもはや、どれがどの猫か分からない!もう読まない!」と。

しかしこの訳し方こそが、T.S.エリオットの原文通りの詩を読んでいる感覚に近いのです。

例えばタガー。彼の名前は “tiger(トラ)” をもじった名前になっていて、アマノジャクなキャラクターなので「ヘンテコヘントラ」になっています。

ミストフェリーズの場合、 “mist” は「霧(きり)や霞(かすみ)」という意味です。名前の由来が「メフィストフェレス」から来ていることもあり、「カスミトフェレス」という訳になっているわけです。

つまり、この作品を研究しつくした上での訳だということが分かります。

 

題名の意味

 

とにかく忠実なこの訳は、作品の題名も忠実に訳しています。原題は “The Old Possum’s Book of Practical Cats” で、このOld Possumというのは「年老いたPossum(ポッサム)」という意味になります。

ですから文庫本版では「ポッサムおじさん」と訳され、題名は分かりやすく『キャッツ ポッサムおじさんの猫とつき合う法』となっています。

一方、この絵本の場合は “Old Possum” の部分が「袋鼠親爺」と漢字で書かれ「ポサムおやじ」と読ませています。読み方については「ポッサムおじさん」とさして変わりないので、漢字に注目しましょう。

私は始め、全く意味がわかりませんでした。当て字にしても遠すぎるし、袋のネズミとは何なのかもさっぱり…。

しかしそうこうしていたら、なんとpossumという単語が存在し、その意味が「フクロネズミ」ということが分かったんです。それでOld Possumを「袋鼠(ふくろねずみ=ポッサム)親爺」と訳しているんですね。

ちなみに、Old PossumとはT.S.エリオットのニックネームだったそうですよ。

 

名前を比較してみよう

 

目次を見て見ると、どれもこれも見たことのない名前ばかりでしたが、それぞれの名前の由来を知ると、ピンとくるものがあるはずです。是非一度、この絵本を読んでみてくださいね。

 

 

ちなみにグリドルボーンは「アブリボーネ譲」と書かれています。その理由はこの記事を読めばきっと分かるはずですよ…。

 

 

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